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惜しかったモノポリー日本選手権

 やっぱり自分はプレイヤーだ。ほかのゲームで活躍することで将棋に興味を持ってくれる人がいたらいい。将棋から他のゲームに興味を持ってもいい。

 モノポリー日本選手権には2年連続で出場させていただいて、2018年度は決勝卓まで惜しかったけれど時間が足りなかった。それも実力だろう。Magic: The Gathering(MTG)というカードゲームの大会には何度も出たけれどさっぱりだった。糸谷哲郎八段は参加すればいつも私よりも好成績で頭が上がらない。なんでもいいから実績を作りたかったけれど、そんな甘くはなかった。

星野四段が出場した2017年度のモノポリー日本選手権

 最近、MTGで王冠泥棒、オーコというカードが暴れまわった。将棋の駒に例えるなら飛車と角と桂馬の動きまでできちゃうようなスーパーカードだったが、登場から1ヶ月半も保たずに使用禁止になった。Hearthstoneでもナーフと呼ばれるカードを弱くすることがある。これはゲームバランスだけでなく、一旦暴れまわっているそのカードを退場させてユーザーの不満を取り除くという狙いがあるのか、今後発売されるカードとの相性まで計算されてナーフされているのか、そんなことを考えるうちにカードを作る側の世界も見てみたいと思った。

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 もちろん簡単に作る側に入れるとは思っていないのだが、妻が退職したのを機に正社員に挑戦したくなったのだ。そんな軽い気持ちで一社に応募したが、返事は未だない。

1993に発売された世界初のトレーディングカードゲーム「Magic: The Gathering」 ©getty

「面白い」と思った気持ちに蓋をしたくない

 軽い気持ちとはいえ、就職したあとの方が暗い未来になることも考える。2年でフリークラスに落ちて収入が減り、棋士を辞めることになるかもしれないと。それでも、「面白い」「やってみたい」と思った気持ちに蓋をして生きていきたくない。それは22歳のあの時から変わらない。なんでも中途半端な将棋が弱い棋士に見えるかもしれないけど、その中途半端を貫くと決めたのだ。

 年が明けて、Twitterを開くとフォロワー数が1000になっていた。「記念に就職を目指す」と言ったら面白いかもと思ってつぶやいてみたら、想像をはるかに超える反響をいただいた。

話題を呼んだ星野良生四段のつぶやき

 昨年12月に出演したゼノンザードのニコ生を見てTwitterをフォローしてくださった、ゲームプランナーの方には実際会ってアドバイスをもらった。カードゲームはゲーム業界のほんの一部にすぎず、ゲーム会社に入るならアクション系なども含めてゲーム全般をある程度広く知っておくことが必要かなと思った。

 そのほか人事職の方、経営者の方からも話があり、ぬくぬくと過ごしていた私にはキャパオーバー気味だが毎日充実感があってとても楽しい。棋士の先輩には話の流れで「君が書いたエッセイなんて誰も読まないよ」と言われた。そう、この記事を書けること自体も就職活動の奇跡なのだ。

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