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神宮球場に鳴り響く「お前がエースだ、石川!」コール

 さて、その石川だが、今季は勝ったり、負けたりを繰り返し、エースとしての圧倒的な存在感を誇るには至っていない。それでも、雨中で行われた今季開幕戦では6回5安打2失点でセ・リーグ2人目となる開幕戦通算5勝目をマークしたのは圧巻だった。

 石川の開幕投手を進言したのは伊藤智仁投手コーチだった。伊藤コーチは言う。

「石川はどんな時でも、痛いだの辛いだの言わずにマウンドに上がり、チームのために投げてくれます。開幕戦という大舞台こそ、意気に感じて投げてくれるタイプ。気持ちで投げてくれる石川こそ、00年代以降のエースです」

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 伊藤コーチの思いは、ファンも同様だ。5月11日、広島東洋カープ戦に先発し、勝利投手となった石川に対して、試合後のライトスタンドでは、公認応援団・ツバメ軍団を中心にこんなコールが響き渡った。

「お前がエースだ、石川! お前がエースだ、石川! お前がエースだ、石川!」

プロ14年目にして初めてリーグ優勝を経験した石川雅規 ©文藝春秋

 そして、当の本人にも「エースの自覚」はある。石川の言葉を聞こう。

「エースというのは、“コイツに任せたら大丈夫だ”“彼が投げるのならばこの試合は勝てる”と周りに思わせる存在のことだと思います。僕はまだまだエースではないかもしれないけど、小さいときから、“自分の投げる試合はオレがエースだ!”という思いを持って投げています。僕は本気で200勝を目指しています。誰からもエースと呼ばれるように、これからも投げ続けます!」

 泥沼の10連敗という苦境にあえぎ、交流戦最下位に沈んだものの、6月中盤にはようやく光明が差し込んできた。これから、勝負の夏場がやってくる。チームが苦境にあるときにこそ、エースの出番だ。02年以降、ヤクルトの先発マウンドを守り続ける小さなエース・石川雅規。チームの浮上は彼の左腕にかかっている――。

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