いまから31年前のきょう、1986(昭和61)年6月26日、プロ野球・阪神タイガースのランディ・バースが、後楽園球場での対巨人戦の8回表、江川卓からソロホームランを打った。阪神は5対5の同点から勝ち越し、これが決勝打となる。バースにとっては6月18日の対ヤクルト戦から7試合連続のホームランで、当時の巨人監督・王貞治が1972年に達成した日本記録と並んだ。

 それまでの4年間、バースは江川に対し51打席10安打、うちホームランは1本打ったにすぎず、むしろ苦手としていた。この日も江川からうまく抑えられ、「4打席まではお手上げだったよ。まったく打てる気がしなかった」と試合後のインタビューで正直に語ったほどだった。それが5打席目、初球は内角高めのストレートでストライクをとられたあと、江川によれば「ほぼ(初球と)同じところへ投げるつもりが、少しコントロールが甘くなった」直球を、バースはライト場外へとかっ飛ばしたのである。

阪神タイガース・ランディ・バース ©時事通信社

 前年の85年、バースはやはり王貞治の持つホームランの年間記録55本(当時)に並ぶのを目前にしながら、巨人との最終戦で露骨な敬遠策を受け阻まれていた。しかし、このとき江川が真っ向から勝負に挑んだことに、「エガワは逃げなかった。オレは彼のチャレンジ精神を尊敬する」と称賛している(江川卓 ほか『たかが江川されど江川』新潮文庫)。

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 続く6月27日の対ヤクルト戦でバースは「打ちあげさえすれば、と思ったのがウラ目に出て、振りすぎ」たため(ランディ・バース『バースの日記。』平尾圭吾訳、集英社)、ホームランが打てず、記録更新はならなかった。それでも7月3日の対大洋(現・DeNA)戦では12試合連続打点の日本記録を達成(翌日には13試合連続にまで伸ばす)、さらにこの年、日本記録となるシーズン打率.389とあわせ、109打点、ホームラン47本を数え、2年連続の三冠王を獲得している。