本当だったら京セラドームのレフトスタンドで、いてまえドッグを頬張り、ビール片手に「あけましておめでとうございます!」とか馴染みの顔に言ってたんじゃないだろうか。前年までの応援歌の記憶を呼び起こしつつ、体を動かして、帰った後に筋肉痛に襲われているはずだった。3月3日、京セラドームで行われたオリックスとロッテのオープン戦は、新型コロナウイルスの影響で無観客試合となった。

 コロナウイルスの影響については、仕方ないとしか思えない。ただ、関西にロッテがオープン戦でやってくるのが2016年以来だったわけなので、それゆえ残念だった。

 テレビでその試合を見ている。ベンチからの声と打球音が響いている。しかしいつもなら聴こえるはずのトランペットや太鼓の音が聴こえないのは何とも不思議な感じだった。

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 どうせなら自分の目でロッテの新戦力を見たかったし、バリバリのメジャーリーガー、オリックスのアダム・ジョーンズも見たかったし、いてまえドッグも食べたかったし、やけにおいしいチキン南蛮も食べたかった。そして球場の空気感も味わいたかった。テレビやネットで試合を見るのと、球場で野球を見るのとは全然違う。

鈴木大地がいないチームを見たかった

 そしてもう一つ、チームを見たかった理由がある。鈴木大地がいないチームを見たかった。オープン戦が始まってすぐ楽天との試合で早速「楽天・鈴木大地」とのマッチアップがあったが、大地との対戦はともかく、大地のいないチームがどのようなチームなのかを知りたかった。

2016年開幕戦の鈴木大地 ©文藝春秋

 鈴木大地といえば、内野のすべてのポジションに加え、外野も守れる、怪我をしない、いざというときはホームランを打つ力もあるというプレイヤー。それだけの選手が移籍してしまったのも痛手だが、それ以上に評価されているのはキャプテンシーだったのではないか。

 投手がピンチに陥れば真っ先に守備位置からマウンドに駆け付け声をかける。攻撃時はベンチの最前線に乗り出して声を出す。練習中、時間があればファンにサインを書く。そうした姿勢が見ていて本当に頼もしかった。