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驚異の代打成功率! かつてのドラフト1位の逆襲

 ところが、そんな伊藤がここにきて存在感を取り戻してきた。ただし、かつて期待されていたチームの主砲としてではなく、冒頭で触れた代打の切り札として、である。思えば伊藤は15年にもチームトップの代打成功率(.316)を記録し、その前年にも代打本塁打を放っている。もしかすると、彼は一打席に集中する代打に適しているのかもしれない。

 もちろん、28歳という年齢を考えると、伊藤本人はこのまま代打屋として生きていくつもりは毛頭なく、あくまでレギュラー奪取を目指しているのだろう。だから、まだまだ道の途中だとは思うが、それでも二年目の高山がパッとしない中、かつてのドラフト1位がじわじわと逆襲に転じているのだから、プロ野球はおもしろい。

 おもしろいと言えば、それはもう阪神の外野手争いそのものだ。最近はチームトップの12本塁打を放っている中谷将大が外野に固定され、ベテランの福留孝介もいれば、復帰が近い糸井嘉男もいる。もちろん昨季の新人王・高山俊もこのまま終わるわけにはいかないだろうし、ここにきて伊藤や俊介といった中堅組の逆襲もある。西岡剛の外野起用は個人的には反対だが、だからといって他に起用できるところも見当たらない。

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 そんな混沌とした中で、金本監督が誰をどう起用していくのか。これだけ候補がいるのだから、どんな決断をしても多くの異論が飛び交うのは目に見えている。今季だけでなく将来的なチーム作りを考えるなら、福留と糸井を外して、オール若手から中堅でいくべきだという考え方もあるだろう。その場合、28歳の伊藤はどう扱われるのか。

 かつて代打の神様と呼ばれた八木裕や桧山進次郎は、若いころはレギュラーの中軸選手として活躍し、ベテランになってから代打稼業に活路を見出した。さらに古くは晩年の真弓明信もそうだった。レギュラー経験がないまま代打として活躍したといえば川藤幸三がそうだが、彼はいろんな意味で特別だからあまり参考にならない。
果たして、伊藤隼太はどこを目指すのか。この代打成功率の高さはレギュラー奪取への布石なのか、新・代打の神様につながる予兆なのか。彼の未来に興味が尽きない。

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