壮絶だった対外試合禁止処分中
そして今年の済美の三年生はあの2014年夏から2015年の夏まで一年間の対外試合禁止処分の期間中に入部してきた学年。当時のお話を関係者に聞かせて頂いたことがあるが、それはそれは壮絶だった。新チームの二年生が翌年の8月まで対外試合禁止という事は、選抜どころか夏にも間に合わないのである。その中で二年生はこのまま引退するのではなく最後まで野球をやる事を選択したのだという。しかし選抜はもちろん、夏の選手権への挑戦権もなく、なんの目標もない野球部の猛練習に負けそうになった選手もいたという。グラウンドは河川敷にあり、たまに二、三人がいないなぁと思い探しに行くと川沿いの草むらから嗚咽がきこえてくる。近づくと地面を拳で叩きながら、
「僕らなんのためにやっとんですか? もうどうしたらええかわかりません」
「やるって決めたんやろ? 最後までやるしかないやろ」
そんな言葉しかかけてあげる事ができませんでした、と。
自業自得だと言われてしまえば、それまでかもしれない。しかし失敗は誰にもある。その中で現実から逃げず、二年生部員達は一番苦しい選択をし、それに耐えたのだ。そんな上級生をみてきていた今の三年生は甲子園を目指せる事の有り難さ、試合が出来る事の喜びを一番わかっていると思う。
さぁ済美高校野球部、この夏の愛媛県代表は君達だ。野球が出来る喜びを聖地で爆発させてほしい。そして、君たちが憧れつづけた先輩も必ず東北の地で躍動してくれることだろう。
陽光(ひかり)の中に まぶしい笑顔
今 済美(ここ)にいるから出会えたね
共に学ぼう これからは
「やれば出来る」は
魔法の合いことば
腕をとり 肩を組み
信じてみようよ
素晴らしい明日(あした)が 展(あ)けるから
『済美学園歌』
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