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「まことちゃんハウス」の意外な用途

 30年以上前から吉祥寺に居を構えている楳図氏は、自宅兼事務所マンションのほかに八王子に一戸建て、八ヶ岳に別荘も所有しているという。そもそも楳図氏曰く、「まことちゃんハウス」は自宅ではなく、来賓を迎える“ゲストハウス”だったと打ち明ける。

「建物の基本って、僕はギリシャにあると思うんです。僕のお家(まことちゃんハウス)の玄関も半円形の屋根を4本の円柱が支えている。だけど近所の人にしたら、“派手”か“地味”の二択で、『派手だから悪い』となってしまった。

新築直後の“まことちゃんハウス”  ©文藝春秋

 以前は、『外国に向けて日本を背負っている』という気も半分くらいあった。それで、あの家は“見栄え優先”で、外国から来た大事なお客さんとかをご招待して、あそこで応対したりしていました。インタビューとかの仕事もあの家で受けたりしていました。けど、今は(事務所のような)貧相な所で受けても理解してもらえるので」

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 すでに楳図氏の中では「まことちゃんハウス」は、過去のものになっているようだ。現在、マンションで一人暮らしの楳図氏だが、コロナ禍ではどのような生活をしていたのだろうか。

「僕、基本的に病院というのは行ったことがないんですね。前に転んで頭を打ったときにお医者さんから悪いところは何もありませんと言われまして、元気です。ひとりで身の回りのこと、お仕事、(事務的な)連絡、すべてやっています。ここ何年もテレビは見てないですね。ラジオで外国語の勉強を30年くらいしています」

 ©文藝春秋

――今後「まことちゃんハウス」を手放す可能性はありますか?

「家を買うのは簡単だけど、売るのは面倒くさいんですよ。僕の気持ちは今、あの家にはなくて、あの家は今、眠っています。ただ、僕はまだ隠居しているつもりはないですよ。今はまだ言えませんが、皆さんがびっくりするようなことが年末に公表されると思うので、楽しみにしていてください。(近々「まことちゃんハウス」に行く予定は?)ないです」

 近所の住人が語る。

「吉祥寺には、水島新司さん(『ドカベン』)、原哲夫さん(『北斗の拳』)ら日本を代表する多くの漫画家が住んでいて、以前は楳図さんのファンと思われる外国人の方たちをたくさん見かけて、カメラ片手にあの家(まことちゃんハウス)を熱心に見ていました。楳図さんは地元の宝ですが、観光客やファンが今のまことちゃんハウスを見たら、少し複雑な気持ちになるかもしれません」

 取材を終えて立ち去るとき、建物に立つまことちゃんの表情がどこか寂しそうに見えた。主が戻る日はくるのだろうか。