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小池百合子「冷めた圧勝劇」の不可解さ 報道機関としての責任を放棄した“テレビの大罪”

『女帝』著者・石井妙子が見た都知事選

2020/07/11
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「選挙はテレビよ」と豪語していた小池氏

 私は5月29日に拙著『女帝 小池百合子』を出版したが、発売からほぼ2カ月で実売部数20万部を超えている。この本が多くの読者に迎えられた理由のひとつには、知るべき情報が得られないという都民、国民の不満や不安が挙げられるのではないかと思う。

 拙著はネット上では大きな評判となり、また雑誌、ラジオでも様々に取り上げられた。選挙後は一部の新聞社でも取り上げられている。だが、テレビだけは頑なに、今も一切、報じようとしない。

 なぜ、テレビは取り上げようとしないのか。巷間、言われているようにテレビ局は東京都の認可を必要とする機会が多く都庁には逆らいづらい、オリンピックも控えており、都知事に気を遣っているからなのか。仮にそうだとするならば、由々しきことである。ネットが台頭しているとはいえ、テレビの影響力は依然として圧倒的に強い。人々はテレビで報じられないことは、この世で起こっていないと感じてしまう。それを小池氏はよくわかっているのだろう。

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 日本新党時代から小池氏は同僚議員に、「選挙はテレビよ」と豪語していたという。テレビを味方につければ勝てるという意味である。

20万部を超えた『女帝 小池百合子』(文藝春秋)

告発者の身の安全をどう守るか

 拙著の中で重要な証言をしている早川玲子さん(仮名)という女性がいる。小池とカイロで同居していた女性である。一部に「匿名であるのはおかしい」という声があるらしい。だが、私は逆にこう問いたい。

 真実を勇気をもって命がけで証言しようとする市井の人に対して、そこまでの負担を強いるのか、と。あるいは、匿名という条件でなら話をしたい、顔や本名は伏せたい、という証言者に対して、それなら必要ない、と断ってしまうのか、と。

 告発者の身の安全、将来を真剣に考えなくてはいけない。日本ではこれまでも勇気をもって真実を告発した人たちが権力者からの逆襲に会い、マスコミからは一瞬だけいいように使われて、大変な思いをする、という例がいくらでもある。私は早川さんをそのような目には絶対に遭わせたくないし、どこまでも守りたい。早川さんの書いた手紙、早川さんの所有する小池氏との写真まで本書では公開しているのだ。後は読者ひとりひとりに判断して頂ければと思う。

 本文(「文藝春秋」8月号)では、私が早川さんと出会うことになった事情を中心に拙著が世に出されるまでの流れを書き、合わせてメディアによって生み出された「小池百合子」という人物を書く中で抱いた所感を述べている。ご一読いただければ、有難い。

 石井妙子氏の「小池百合子に屈した新聞とテレビ」は「文藝春秋」8月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

出典:「文藝春秋」8月号

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小池百合子に屈した新聞とテレビ
小池百合子「冷めた圧勝劇」の不可解さ 報道機関としての責任を放棄した“テレビの大罪”

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