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小池百合子「冷めた圧勝劇」の不可解さ 報道機関としての責任を放棄した“テレビの大罪”

『女帝』著者・石井妙子が見た都知事選

2020/07/11

 都知事選が終わり、予想どおり小池百合子氏が再選を果たした。メディアは「圧勝」と報じた。だが、「圧勝」というには、あまりにも熱の感じられない選挙ではなかったか。

 4年前の都知事選はお祭りのような騒ぎだった。告示日前から連日、テレビは小池氏や他候補者を追いかけて実況中継し、ワイドショーを賑わせていた。

 それなのに今回はいったい、どうしてしまったのか。コロナ禍という問題があったにしろ、テレビは候補者による討論会さえ一度も開かず、街頭演説も報道しなかった。

小池百合子氏 ©共同通信社

 小池氏はイメージ戦略に長けた政治家であり、つねにメディアをコントロールして選挙を戦い、現在の地位を確立してきた。

 そんな小池氏が今回取った作戦は、「雲隠れ戦術」とでもいうべきものだった。4年間の都政を振り返ってみれば、公約はほとんど達成されておらず、討論会に出席すれば他候補から、厳しく追及されたことだろう。また、拙著『女帝 小池百合子』で書いた学歴詐称疑惑といった問題も必ず取沙汰されたであろう。街頭演説に出なかった理由もヤジを飛ばされるのが怖かったからではないか。

当確後に小池都政を批判しはじめたテレビ

 テレビ局は小池氏が出席しないと言うのであれば、彼女以外の候補者だけを集めて、討論会をすべきであった。それが報道機関のあるべき姿であろう。だが、その義務を怠り、討論会そのものを開かなかった。

 7月5日の投票日になって選挙特集を組み、当確が打たれた後で、記者たちが小池都政に対する批判や印象を述べているのを見たが、こうしたことは投票日前にしなければ意味がないのではないか。

©AFLO

 よく、「選挙期間中なので候補者を公平に扱わなくてはならない」という意見をメディアの人間が口にすることがある。しかし、選挙期間中に候補者の問題点を報じてはならない、という法令などない。メディアが自主規制しているだけだ。国民の知る権利に応えるためにも、報道機関はむしろ積極的に候補者の情報をプラスであれ、マイナスであれ、責任を持って出すべきであり、それをしてこそ報道機関といえるのではないか。

 小池氏が討論会や街頭演説を拒んだ結果、他候補はテレビで紹介される機会を奪われた。その一方、小池氏はコロナ報道で連日、会見を行い、テレビに姿が映された。これこそ、公平とは言えない。