「なぜ指がないのか?」――ヤクザや元ヤクザの人間にこうした類の質問をしてはいけない理由とは? 山口組系組長から更生を果たし、現在は暴力団員の更生支援のために活動するNPO法人五仁會(ごじんかい)代表の竹垣悟氏の新刊『極道ぶっちゃけ話「山口組四代目のボディガード」の半生記』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
◆◆◆
ヤクザが「彫り物」を入れる理由
「針地獄」といわれる刺青は、やくざの世界では別名「ガマン」ともいう。
カネも時間もかかるし、痛いからガマンするしかないという意味である。
親からもらった体を汚すことで、カタギの世界と縁を切り、もう戻らないという決意の表明でもある。
入れたところで何もいいことはなく、ムショに入ったときに、立派な彫り物であれば自慢できることくらいであろう。
もちろんカタギになってから十年を経て、64歳にもなって、七分袖も着られないぐらいのところまで腕に刺青を入れるのは尋常でないといわれることは承知のうえである。
しかし、私は二人の志を実現させるために信念を持って彫らせた。このまま冥土に行っても二人とともにいたいからだ。
これは「侠気」というより「狂気」である。この狂気は生まれ持った星のせいだと思う。しかし、無鉄砲で命知らずの私がこの年まで生きてこられたのは、この二人の教えがあったからである。人生はなるようにしかならず、ものごとに執着しないのが私のスタイルだが、それが貫けているのは二人が守ってくれているからだ。
二人の霊が私の守護霊となって、この世に何ごとかをなすために生かされてきたのだと、最近になってようやく気づいたのだ。