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「謙虚な気持ちで日々を過ごしたい」

「プロ野球選手というのは、野球で活躍すればすごく評価されたり、周りはもてはやしてくれたりするけど、それはすなわち人間的に偉いということでは絶対にない。その辺を勘違いしないようにしたい。いつもお世話になった人への感謝の気持ちを忘れずに謙虚な気持ちで日々を過ごしたいという思いがある」

 人間はある程度の力がついてくると、周囲への感謝を忘れがちになる。活躍したことで勘違いをして自分は偉いと思ってしまうケースはプロスポーツの世界に限らず、どの分野の人間にもあることだ。しかし、どれだけ成功しても個人で優れた能力を発揮しても、自分ひとりで成し得た事ではないはずだ。親などの家族や恩師、仲間など周りの助けや親切、愛情が重なりあった上で成り立っているのである。それを忘れ、周囲への謙虚さを持たずに生きている成功者はなんとなく虚しく悲しい。だからこそ井口は、礼儀を重んじ、謙虚な気持ちで感謝を忘れないでいようと、いつも自戒の思いを込めて、この句を思い出している。

 あれから長い月日が流れた。やはり好きな言葉は、その人の性格、人生観を表すものであると改めて思う。背番号「6」ほど、これまでお世話になった人を大事にしている人はいない。そして、いつも謙虚な姿勢で人に接し、練習をこなす。また、野球だけではなく、いろいろな分野に興味を持ち、つねに成長しようという貪欲な思いが感じられた。社会貢献活動へも熱心だ。児童養護施設などへの訪問を定期的にずっと行っている。後輩たちもそんな井口を尊敬し、その言動に熱視線を送った。

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 そんな男が今シーズン限りで現役引退をすることを表明した。9月24日、ファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム、14:00試合開始)で引退試合が行われ、この日をもって21年間にもおよぶ現役生活に別れを告げる。ここまで日本では1914試合に出場をして1758安打、250本塁打、1015打点。その一つひとつには、これまで支えてくれた周囲の人への感謝の思いが込められている。引退試合、最後のグラウンドもまた謙虚に感謝の2文字を胸にプレーをする。その一瞬、一瞬を私も胸に焼き付けたいと思う。

引退試合ロゴ 千葉ロッテマリーンズ提供

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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