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責任は全て取るという強い意志

 政治家が官僚とあい対峙した時、政治家の能力が問われます。  

 初当選して以来、師事していた梶山静六先生(故人)は、「おれは官房長官の時に、バブル崩壊後の処理について、6850億円を投入した住専以外に不良債権はないかと官僚に聞いたら、この問題さえ解決してもらえれば他にありませんと答えた。それが、後から後から不良債権が100兆円も出てきた。信用したのが失敗だった。あのときに解決していればなあ」

 と、自嘲気味によく話されていました。
 

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©文藝春秋

「官僚は説明の天才であるから、政治家はすぐに丸め込まれる。お前には、おれが学者、 経済人、マスコミを紹介してやる。その人たちの意見を聞いた上で、官僚の説明を聞き、自分で判断できるようにしろ」

 と、常々言っておられたものです。

 私はこの言葉を胸に刻み、判断力を身につけるよう心掛けてきました。

 政治家の身分は選挙によって国民から委ねられていますが、官僚は身分を保障されています。政治家は政策決定に際して、官僚から過去の経緯や蓄積された知見、現状について説明を受けます。そのときに気をつけなければならないのは、自身の信念と国民の声をいかに反映させるかということです。

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 官僚はしばしば説明の中に自分たちの希望を忍び込ませるため、政治家は政策の方向性が正しいかどうかを見抜く力が必要です。

 官僚は本能的に政治家を注意深く観察し、信頼できるかどうか観ています。政治家が自ら指示したことについて責任回避するようでは、官僚はやる気を失くし、機能しなくなります。
 
 責任は政治家が全て負うという姿勢を強く示すことが重要なのです。それによって官僚からの信頼を得て、仕事を前に進めることができるのです。
 

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菅 義偉

文藝春秋

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