菅義偉首相が、日本学術会議の会員候補として同会議が推薦した105人のうち、6人の任命を拒否した問題が波紋を広げている。

 政府関係者が語る。

「日本学術会議法では、同会議は『独立』した存在と規定し、会員は『内閣総理大臣が任命する』としていますが、政府は1983年に『実質的に首相が任命を左右することは考えていない』とした国会答弁を基に、あくまでも形式的な任命制であって総理に任命の拒否権はないという解釈を維持してきました。しかし、2018年ごろに解釈を変更し、拒否権があるとの解釈に改めたというのです。

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日本学術会議への批判も噴出した ©時事通信社
日本学術会議事務局 ©時事通信社

黒川氏の「定年延長ゴリ押し」と全く同じ

 これは、今年の1月31日に黒川弘務元東京高検検事長の定年延長を閣議決定した際に、政府が1981年に国家公務員法改正案の審議の中で同法の定年延長制度は『検察官に適用されない』としていた解釈を変更し、『適用できる』として、黒川氏の定年延長をゴリ押ししたケースと全く同じです。安倍政権の番頭格である官房長官を務めた菅首相の本質は、強権人事で高級官僚だけでなく、捜査官である検察官や学者までをもグリップしてコントロールしようとする“強権政治家”なのです」

黒川氏のライバル・林眞琴氏。黒川氏退任の後、東京高検検事長に就任し、その後、検事総長に ©共同通信社

 任命を拒否された6人は、いずれも安倍政権が成立を強引に推し進めた安全保障関連法やテロ等準備罪に反対した学者たちだ。東京大学大学院の加藤陽子教授に至っては、黒川氏の定年延長にも反対を表明していた。

加藤陽子氏 ©文藝春秋

 法曹関係者が言葉を継ぐ。

特捜検察をグリップする「マウンティング人事」も

「菅首相が上川陽子氏を法相に戻した理由は、菅氏の『側近』と呼ばれた河井克行氏ら自民党に所属していた国会議員3人をこの1年間に次々と逮捕した特捜検察の動向をグリップするためだと、法務・検察内部ではささやかれています。

 菅首相は、上川氏に法相として林眞琴検事総長に対してにらみを利かさせることで、特捜検察をグリップしようとしているのです。法相には検事総長に対する指揮権がありますが、そんな『伝家の宝刀』に頼らずとも、林氏は上川氏に頭が上がらないからです」