トランプ米大統領の「洪水戦略」をご存じだろうか。さまざまな政策を次々に打ち出して洪水のように情報をあふれさせ、批判をかわす戦略のことだ。

 それでいうと大阪・関西万博はうっかり洪水戦略をやっていた。会場建設費の増大、海外パビリオンの建設遅れ、売れない前売りチケット、メタンガスの危険などなど、開幕寸前まで負の情報が洪水のようだった。どこから見ていいか迷ってしまうほどニュースのパビリオン状態だった。

知事2期目の吉村氏 ©時事通信社

万博協会が「しんぶん赤旗」を取材拒否

 さてこうなると注目は「メディアの力」だ。開幕4日前にメディアに会場見学をさせた翌日、紙面は賑わった。

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『大阪関西万博お披露目 開幕あと3日!!想像超えるワクワク』(スポーツ報知)

 これは楽しそう! 

 朝日新聞も負けていない。

『万博めし、ここにしかない味 えきそば3850円、養殖魚のすし160円から 海外ご当地グルメも』

 と3850円のえきそばを薦めていた。普段は庶民派を偽装する朝日だがこういうとこでバレてないか。いずれにしてもメディアの力は偉大だ。万博のプロセスや現状の問題点が一気に吹き飛ぶムードになった。

 一方で驚いたのは万博協会が「しんぶん赤旗」を取材拒否したことだ。日本共産党機関紙「赤旗」は愛知万博でも協会から記者証が発行され、政府官庁・自治体でも他メディアと差別なき対応を受けており、今回の取材拒否は異常だと記者はSNSで訴えた。

《問題点を追及するフリーの記者も排除されており、批判的報道を締め出すねらいがみえます。》(「赤旗関西記者」のX)

 思い出したのは万博協会副会長の吉村洋文大阪府知事である。昨年、リング建設などに疑問の声を上げていたコメンテーターの玉川徹氏に対して「『入れさせてくれ』『見たい』といっても、もうモーニングショーは禁止。玉川徹禁止と言うたろうかなと思う」と発言。言論統制だと批判された。吉村知事は発言を撤回したが自分の気に入らないメディアや記者は取材させないという態度は万博で続行中なのだ。