松井前知事にどうなれば「成功した」と言えるのか問うと…

 先週、松井前知事は朝日新聞で今回の万博はどうなれば「成功した」と言えるのか? と問われ「僕はもう成功したと思っている」と答えている。「巨額の経済効果があると試算されている」と。ああ、確かにカネの話だけで文化的なことは言ってない。その経済効果も「試算」が前提なのだが。

松井前知事 ©文藝春秋

 ちなみにパビリオンなど建物の一部に間に合わない部分があっても「もうそこは愛嬌の範囲だと思う」とも。あれは杜撰ではなく愛嬌だったのか。

 さて、松井前知事が万博はもう「成功した」と主張する一方、「失敗」だと開幕前から断じた本がある。先述した松本創氏を始め5人の書き手が多角的に検証する『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書)だ。昨年夏に刊行されている。

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 なぜ開幕前のタイミングで検証が必要なのか。メガイベントとは、

《どんな形であれ、終わってしまえば、なんとなく「やってよかった」という空気ができ、それに乗じて関係者は「大成功だった(私の手柄だ)」と言い募る。》(同書)

 東京五輪もそうだった。「成功」の基準がないからいくらでも恣意的に語られてしまう。そうなる前に批評精神で指摘しておくべきだと考えたという。こうした姿勢は税金も投入されている巨大イベントでは当然だろう。しかし万博側はメディアを選び、取材拒否もする。旧日本軍にも通じる「失敗の本質」そのままだ。

《維新首長の下で府市が一体化し、政治と行政の間の線引きも失われた今の状況では、おそらく誰の責任も問われない。大阪が置かれたその状況こそ、大阪・関西万博「失敗」の本質であろう》(同書)

 一方で松井前知事のような「もう成功してる」派はニンマリだろう。万博開催でカジノ(IR)のインフラ整備が「堂々と」できたのだから。

 やっぱり万博をPRしてくれるメディアの力はすごい。そういえばオンラインカジノで吉本芸人が送検されてカジノに関するイメージは悪くなった。しかし今回の万博のように「皆さん、オンラインじゃない安全なカジノがいよいよ大阪にできます」という礼賛報道がいずれ出てくるのではないか? そんな予感しかしないのである。とりあえず賭けておきます。

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