「一緒に死のうね」――元ガールズバー店長(当時21歳)推しのホスト(同20歳)を刺し殺そうとした、「新宿歌舞伎町ホスト殺人未遂事件」(2019年)。事件はどんな結末を迎えたのか? そして、事件後の2人の人生とは…。
実際に起きた事件や事故を題材とした映画の元ネタを解説する新刊『映画になった恐怖の実話Ⅳ』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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「親不孝でごめんなさい」
5月23日朝、デリヘルの仕事から戻ったYは一眠りした後、Rさんに「片付けがあるから来てほしい」とLINEを送る。当時、2人は半同棲状態で、部屋には彼のスマートフォンが置きっぱなしになっていた。それを盗み見たところ、知らない女性とのツーショット写真が。ショックを受けたものの、15時ごろに訪れたRさんにそのことは知らせず、一緒に部屋のカーテンをつけた。
この後、2人してベッドに入り、Yはパンツ1枚で寝入ったRさんの腹部に包丁を突き刺す。犯行が衝動的なものではなかったことは、彼女が凶行に及ぶ前日、自身のスマホに残した遺書とも思えるメモ書きが物語っている。
〈お母さん、お父さん、○○ちゃん、××さん、□□くん(※Rさんの先輩ホストの名前)ごめんなさい。私に関わった皆さますべてにごめんなさい。昔からずっと虚言癖がひどくて、悲劇のヒロインになりたくて、美しくてはかないものになりたくて、何があって何がなかったことなのかわからない。親不孝でごめんなさい。大好きな人ができて、どうしたら私以外を見なくなるのか、殺せばいいと思いました。(被害者の本名)くんを愛してる。心の底からどうしようもないほど愛しているけど、お金としか見てくれなくて、Rくんは私に嘘の言葉しかくれなかった。僕はホストだからって。けれど死ねばそれが本当になる。だから今は大事にしたい。一緒にいられるなら何でもするから安心してね〉
強烈な痛みで目を覚ましたRさんは、腹部に刺さった包丁を見てパニックになり、自らそれを抜いた。傷は深く肝臓まで達していた。
