このときYは彼の上に乗っかり、「私のこと好き?」と聞く。「好き。警察を呼ばないから救急車を呼んでくれ」と答えるRさんに対して「一緒に死のうね」とだけ答えた。スマホを取り上げられ、自分で119番通報できなかった彼は、Yを突き放し玄関から外に出てマンションのエントランスまで逃げたところで力尽きて倒れる。そこにYが追いかけてきて、スマホで警察に通報。救急に連絡しなかったのは「死んでいくさまを見ていたかった」からだという。

 ほどなく駆けつけた新宿署員により現行犯逮捕されたYは、取り調べで「好きで好きでしょうがなかったから刺した。自分も死ぬつもりだった」と供述。一方、Rさんは病院に救急搬送され、5日間の昏睡状態の後に意識を取り戻し、奇跡的に一命を取り留めた。

判決は…

 裁判は事件から7ヶ月後の2019年12月3日より東京地裁で始まり、Y被告は起訴内容(殺人未遂罪)を「間違いありません」と蚊の鳴くような小さな声で認める。公判には、まだ傷も癒えない被害者のRさんも証言台に立ち、同被告の減刑を求めた。

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 実は裁判の前に、Y被告はRさんに謝罪文を送るとともに、500万円の慰謝料を支払い、歌舞伎町とRさんに接近しないことを誓約、示談を成立させていた。対して、Rさんは「刑事処罰は求めない、被告には寛大な処分を求めます」との嘆願書を裁判所に提出。その理由を法廷で検察から聞かれた彼は「僕もこうやって普通に不自由のない生活が送れているので、彼女も普通の生活が送れればいいなって思いました」と答えている。

写真はイメージ ©getty

 検察の懲役5年の求刑に対して、同月5日に裁判所は「身勝手極まりない犯行」として懲役3年6ヶ月の実刑判決を宣告。Y被告側は判決を不服として控訴したものの、2020年8月8日、東京高裁はこれを棄却し、そのまま刑が確定。

 Yは受刑者として刑務所に収監された。