林氏の「事務次官拒否」で検事総長コースから外した
「2018年1月に国際仲裁センターの日本誘致の方針をめぐる意見対立から、法相だった上川氏は林氏の法務事務次官昇進を拒否し、強権人事を発動して検事総長コースから外れる名古屋高検検事長に“左遷”した経緯があり、上川氏は菅首相好みの強権政治家なのです。本質的に似たもの同士ということで、菅首相は上川氏を法相に起用したわけです。検察制度は三権分立の原則に基づき、独立性が担保されるべきものです。それを踏みにじってもいいという考え方は、日本学術会議法で規定された独立性を無視した姿勢と全く同じと言えるでしょう」(同前)
安倍政権下で7年8カ月にわたって官房長官として強権人事を断行してきた菅氏は、自身の政権下でも強権人事を早速断行したというのが、日本学術会議の会員人事ということになる。果たして今後も、菅政権では強権人事が繰り返されるのだろうか。
生前退位をめぐって宮内庁長官も“事実上更迭”
「菅氏は上皇さまの生前退位の意向をリークしたとされる宮内庁で、長官を務めた風岡典之氏を、定年のめどとされる70歳の誕生日を迎えた2016年9月になるとすぐに退任させています。事実上の更迭で、典型的な報復人事だったとの見方が有力です。日本学術会議のケースを見ても分かるように、今後はむしろ強権人事の対象や範囲が広がっていくとの懸念すらあります」(前出・政府関係者)
「地盤、看板、鞄をもたないたたき上げの苦労人」「農家出身の庶民派」「酒は一滴も飲めないが、実は甘党」——。菅首相誕生直後にマスコミが菅氏を褒め称えた表現がこれだ。
だが、実際は人事を握って役人ばかりでなく、捜査官や学者までをも牛耳ろうとする強権政治家という“素顔”が、ここにきてはっきりと見えてきたことは間違いないだろう。