あのジョージ・ソロスを大儲けさせた〝伝説のコンサル〟齋藤ジン氏が明かす、トランプ大統領の経済政策のリアルとは……。斎藤氏とジャーナリスト・池上彰氏の対談「日本復活のチャンスが来た」から一部紹介します。

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関税をレバレッジとして利用

 池上 トランプ氏はことあるごとに輸入品に関税をかけると言いますが、実際には高関税が目的ではなくて、最初にふっかけておいて、それを材料にディール(取引)をし、アメリカにとって得になることを引き出そうとしている。そう考えていいのでしょうか。

 齋藤 いいと思います。トランプさん本人も言っていますが、関税をレバレッジ(てこ)として利用しています。もし中国製品に対して、本当に60%の関税を課したら、アメリカ経済はつぶれてしまう。ですから、そういうことはしていませんし、今後もしないでしょう。

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齋藤ジン氏 Ⓒ文藝春秋

 池上 EUに対しても高い関税を課すと言っていますね。

 齋藤 EUについてもレバレッジがほとんどだと思いますが、最終的には国家安全保障上の理由で関税を課すかもしれません。米中の緊張がさらに高まったり、台湾有事が起きたりしたら、国家安全保障に関連するもの、例えば、医薬品や鉄、半導体などは国内や同盟国で作っていかなければなりません。その事態に備えて、生産設備を国内や同盟国に戻しておきたい。そのための高関税は実行される可能性があります。

トランプ大統領の経済政策に世界が翻弄されている ©SPUTNIK/時事通信フォト

トランプ最大の武器は直感力

 池上 トランプ大統領にそこまでの深謀遠慮があるようには見えないときがあります。彼は直感に優れた政治的天才なのか、それとも運がいいだけで、単なる思いつきがうまくいっているだけなのか。

 齋藤 国民や目の前にいる相手が何を求めているのかを察知し、共感する直感力は天才的だと思います。

 池上 表には出ずに裏でアドバイスするブレーンはいるんですか。