トランプの「勝利の方程式」とは

 齋藤 トランプさんは、政権スタッフの間でライバル関係を作り、彼らを競わせて、意見を吸い上げ、見極めていくそうです。トランプ政権にいた方によれば、「閣議で自分に全然関係ない話をふってくる」。トランプさんは、問題が今、発生しているということは、専門家の見解や意見は正しくなかったのだ、と考える。そこで「専門家ではない、あなたはどう考えますか?」と既成概念に捉われないアイデアを訊いてくる。

 池上 なるほど。

新刊「世界秩序が変わるとき」(文春新書)が話題の齋藤ジン氏(左)と池上彰氏 ©文藝春秋

 齋藤 また、トランプさんの強みは、エリートたちだけでなく、一般庶民とも瞬時に心を通わせられることです。彼が外国からアメリカに帰還した二等兵と面会したとき、その兵士は「この人は私の苦しみを理解してくれた」と感動していたそうです。そしてそれは、なぜ戦争がうまくいっていないのか、現場の声を聞くことで、将軍たちによって歪曲されていない情報を求め、新たな視点で課題に向き合うスタイルに通じます。ただ、このエピソードを教えてくれた方は、「トランプ氏の問題は、二等兵と将軍の意見を同じウェイトで聞き入れてしまうことなんだ」と苦笑いしていましたが。

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 また、トランプさん自身は秩序立てて物事を考える人ではないが、勝つことに異常にこだわるとよく指摘されます。直感的にどちらが強いかを判断して、強い方、勝つ方に賭け続ければ、最後に勝つことができる。それがトランプさんの勝利の方程式のようです。

※本記事の全文(約10000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と、「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(齋藤ジン×池上彰「日本復活のチャンスが来た」)。

■全文では下記の内容をお読みいただけます。
・MAGA派とマスクの同床異夢
・無茶な関税はレバレッジ
・日本はスネ夫になれ
・チャンスを掴んでいた岸田首相

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