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オリックス・宮城大弥の「圧倒的なマウンド度胸」に“個性派エース”星野伸之の姿を思い出す

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/04
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星野伸之を正しく表すなら「個性派エース」と言うべきなのだ

 宮城大弥と星野伸之。プロとしては恵まれない体格の左腕。90キロ台のスローカーブや抜群のコントロールや切れ味鋭いストレートなど二人の共通点は多いが、僕が二人の共通点として何より強く感じるのはやはり「マウンド度胸」だ。

 星野伸之を評する時によく聞く「軟投派」「技巧派」という言葉が僕は嫌いだ。星野伸之は断じて軟投派や技巧派ではない。球界随一の本格派だったと思っている。星野の持ち球はストレート、カーブ、フォークの3つしかない。これは当時のパ・リーグを代表する本格派投手だった野茂英雄と同じだ。軟投派、技巧派とは多彩な変化球をいくつも操り、繊細なコントロールでボールになる変化球を駆使して上手に「かわす」投手のことだ。星野の投球スタイルは全く違う。

 まず星野は無駄なボール球を極力使わなかった。なので通算完投数が近代の投手としては抜群に多い。そしてMAX130キロに満たないストレートにもかかわらず通算奪三振2041個。星野は強打者相手に平然とストライクゾーンにスローカーブを投げ込み右打者のインコースへのクロスファイアーで空振り三振を奪ってみせた。120キロのストレートと90キロのスローカーブで強打者に真っ向勝負を挑む星野の投球スタイルを貫くキーワードもまた「度胸」と「勇気」だったように思う。その星野の勇敢さは、開幕戦やペナントがかかった勝負所の試合での彼の勝負強さにもつながっていた。だからこそ95、96年のオリックスはエース星野を軸としてリーグ連覇を成し遂げられたのだ。

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 僕は星野伸之のマウンド度胸や勝負強さが大好きだった。あれこそエースの姿だと思ったからだ。さらに星野には128キロのストレートと90キロのスローカーブで三振を積み重ねるプロ野球界で唯一無二の愉快な個性があった。そう、星野伸之を正しく表すなら「個性派エース」と言うべきなのだ。

 そして今、長い長い低迷期を経てオリックスには星野伸之以来の大エースが誕生しようとしている。もちろん山本由伸、山岡泰輔、田嶋大樹などオリックスの若き先発陣は誰がエースになってもおかしくない若き本格派の才能がひしめき合っている。そんな中でも宮城大弥の存在感は異質だ。それは彼だけが唯一無二の「個性派」だからに他ならない。

 かつて星野伸之に似ている投手はどこにもいなかったように、今のプロ野球界で宮城大弥に似ている投手もどこにもいない。そんな宮城大弥の「愉快な」プロ野球人生をどこまでも追いかけていきたいと今強く思う。マウンド度胸と個性派プロ野球選手を愛する僕はいつの間にか宮城大弥に夢中になっている。もちろん山本も山岡も田嶋も大好きだ。エースは誰がなってもいいとも思う。彼らの切磋琢磨のその先にオリックス・バファローズの栄冠も必ずあるはずだから。その栄光の瞬間のマウンドに個性派左腕エースに成長した宮城大弥が仁王立ちしている。そんなシーンを夢見ながら、今日も明日も「SKY」を口ずさもうと思う。

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