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苦しいときこそ――西武の守護神・増田達至の登場曲にベリーグッドマンが込めたメッセージ

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/04

 負けない気持ちがあるから また君の力になれる――。

 このフレーズから始まるメロディーがメットライフドームに流れると、昨年の西武ライオンズは1度も負けなかった。

 昨季、5勝33セーブで無敗だった守護神・増田達至投手の登場曲「ライオン」だ。

 文句なしにかっこいい曲だけど、ライオンズの守護神の登場曲が「ライオン」なんて、あまりにもピッタリすぎはしないか?

 そんな思いを出発点に、「ライオン」のことが知りたくなり、曲の作り手であり歌い手である3人組ボーカルユニット「ベリーグッドマン」のメンバーMOCAさんに、「ライオン」の誕生秘話を取材させてもらった。

 そこには、増田へのエールだけではなく、亡き友への熱い思いがあった。ライオンズファン、そしてベリーグッドマンのファンの方々にも是非、知っていただきたい。

MOCA

増田とベリーグッドマンの共通点

「これまであんまりはっきりとは言ってこなかったんですけど」とMOCAさんは前置きした上で、教えてくれた。

「『ライオン』は、増田投手に向けて作らせてもらった曲なんです」

 元々、増田とベリーグッドマンに特別な交流があったわけではない。きっかけは増田がベリーグッドマンの楽曲「コンパス」を登場曲に使っていたことだった。

「プロ野球選手で僕らの曲を最初に使ってくれたのが増田投手でした」

 MOCAさんは宮崎県・延岡学園高校で甲子園を目指していた元球児。その経験を踏まえたアツい曲も多い。今でこそ、多くのプロ選手が登場曲として使うが、その最初が増田投手だったというわけだ。

©文藝春秋

 そんな折、前田健太投手(現ツインズ)からの依頼で楽曲を提供することになった。もちろん、うれしいことではあったが、3人の中にはこんな思いがあったという。

「順番を飛ばした感覚というか。『増田投手に失礼やんな』と。僕らが名もないときから曲を使ってくれていたのに」

 そこで、「増田投手に曲を作ろう」となった。増田がマウンドに上がり、強打者たちと対峙する姿と、自分たちが今までの辛かった日々に負けずに立ち向かってきた姿を重ね合わせて形にした。

「ライオンは『百獣の王』と言われて、1番強いとされている。でも、絶対に弱さも併せ持っている。それでも、『負けるわけにはいかん』という、自分たちの中で、ライオンってそんな象徴」

「増田投手は口数が多いタイプの人ではないし、LINEとかでも『ありがとうございます。』とかで終わるタイプの人。でも、胸に秘めている強い思いがなかったら、あのマウンドに立ち続けることはできないだろうし、自分たちの『コンパス』を愛してくれていたなら、絶対に思いは一緒なはずだと。『おれは多くは語らないが、この曲がおれの思いだ!』っていうのを、球場の人たちやチームメートに感じてもらえるようにと意識しました」。MOCAさんの口調が熱を帯びた。