ここ10年以上、苦しい苦しいペナントレース序盤が続く我らがオリックス・バファロース。開幕戦から信じられない逆転負けや唖然とする自滅など奇跡的とも言える負けっぷりで早々にペナントレースから脱落してしまう様子を毎年毎年ただ哀しく見つめるしかなかったオリ達、オリ姫。

 しかし今年は少し様子が違う。中嶋新監督が就任した昨年8月からチームは一変。将来性豊かな若手選手や不遇をかこっていた眠れる大砲など間違いなく将来のバファローズの主力となるべき<ライトスタッフ(正しい資質)>がグラウンドに立つチャンスを与えられ、まだまだチームは発展途上ながらも僕らバファローズファンにとって久々にワクワクする日々が帰ってきた。そんな新生中嶋オリックスが抜擢したプロスペクトの中でも一際強い輝きを放つ若者がいる。

宮城大弥

宮城大弥が持つ唯一無二の資質

 宮城大弥。沖縄県・興南高校出身。2019年ドラフト1位。高卒2年目の弱冠19歳。今季はほぼ毎週日曜日に登板し、投げるたびにバファローズファンの度肝を抜く驚異の先発投手。その投球スタイルと安定感は日本プロ野球界最強の投手となった山本由伸すら凌駕しているように見える。171センチ83キロ。プロの投手として決して恵まれた体格とは言えない宮城大弥の長所とは何なのだろう?

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 150キロに迫る切れ味抜群のストレート。鋭く変化するスライダーとチェンジアップ。打者を幻惑する90キロ台のスローカーブ。それらを自由自在に操る抜群のコントロール。

 確かにどれも素晴らしい。だが宮城大弥の真骨頂はそこにはない気がするのだ。プロ野球の世界には上記4つの資質を持つ投手は他にいくらもいるだろう。そんな最高峰の世界で宮城大弥が持つ唯一無二の資質とは他の追随を許さない圧倒的な「マウンド度胸」だと僕は思う。

 浅村栄斗、山川穂高、中村剛也、レオネス・マーティン、中田翔などの強打者相手に大胆不敵なスローカーブを投げ込み、鋭いスライダーでカウントを稼ぎ、インコースへのクロスファイア-で3球三振を奪うあの「度胸」と「勇気」。

「無駄なボール球なんて使う気はねえよ」と言わんばかりのマウンド捌きで5回60~70球で平然と投げ抜いていく姿にはプロの世界で10年メシを食ってきた百戦錬磨の大エースの風格がある。高校時代の恩師から「琉球ジジイ」と呼ばれていたという宮城大弥の背中から落ち着き払った大エースのオーラを感じるのは僕だけではないだろう。

 そんな宮城の姿を見ていて強烈に思い出す投手が一人いる。

 183センチ71キロ。プロとして細身すぎる体格ながら128キロの直球で大胆不敵なインコース勝負を挑み、90キロ台のスローカーブ、110キロ台のフォークで打者を幻惑したあの投手。清原和博、初芝清、タフィ・ローズ、トニー・バナザード、梨田昌孝など当時のパ・リーグを代表する強打者たちから「最もストレートが速く感じた投手」「最も打ちにくい投手」と評され、名将・野村克也から「投げる芸術品」と絶賛された。11年連続二桁勝利、通算176勝、2041奪三振、129完投。そして95、96年のリーグ連覇時オリックスの絶対的エースとして君臨した左腕・星野伸之である。