人手が足りない、治療法が確立されていない、その中で
——去年は少しは甲子園観戦に行けたようですが、今年はもっと状況が厳しいですよね。京都でもそうですが、大阪はもっと……。
そうですね。第3波に関しては、第2波に比べてかなり感染者が増えた時期でもあったんで、ご高齢の方がかなり多かったんですね。ご高齢の方は隔離された状態だと普段の認知能力も落ちてしまったりするので、病院の中がカオス状態になりました。部屋の中に絶対いてもらわなあかんのに、部屋から出てくる、部屋の中でこけちゃう……。私たちは防護服を着てから入らないといけないので、コールが鳴ってもすぐに行けない状況で、部屋の中で転けてしまってたり。その必要性が理解できなくなって、酸素の投与を全部外してしまったりする人もいました。「これは大事なんですよ」って伝えても、わかってもらえない。そういう悶々とすることが、第3波はかなり多かったんです。
第4波になると、重症の方がかなり多くなり…。若い方でも、40代とかでもすぐに重症化してしまって。同時にまた高齢の方の感染者も増えてきてます。すると、一刻を争う40代の方がいる中で、転けちゃったり、部屋から出てきちゃったり、酸素を外しちゃったりする人も増え、言うことを聞いてくれない、暴力を振るうような方も出てきます。そういう方も看ないといけないというのが現状です。ちょっとだいぶ厳しい状況ではあるなぁとは思います。
——そうですか……。
報道でもあったんですけど、ある施設でクラスターが起きて、3分の1の方が亡くなられました。病院の現状としては、施設におられるような方をなかなか受け入れできないんですね。それこそ命を守るために入ってもらうのに、部屋から出てきちゃったり……。ちゃんと指示が守ってもらえないと、結局感染を他にも広げてしまう可能性が高くなります。なので、「徘徊する方はちょっとごめんなさい、うちでは看れません」と断ることもあります。
病床が空いてても、やっぱりそういう方が1人おられると、看護師もかなりの人数必要になりますし。それプラス、一刻も早く救命をしないといけない方が何人もいるわけでして。今までなら、中等症から重症病棟に移すこともできたんですけど、それができないので、そういう方も看ながらというのは、実際にマンパワー不足もありますし、なかなか厳しい現状ですね。第1波から比べて4波はかなりシビアになってきてるというのはありますね。
入院できるできないのところから、(命の)選択が始まってしまっている。それを毎日肌で感じるのは、ちょっと麻痺する部分っていうのもあるんですけど、自分の親やおじいちゃんおばあちゃんのことに置き換えると、本当に辛い……。
——防護服を着ながら暴れる人を抑えるとか、めちゃくちゃ大変ですよね。
破れたらその時点でもう終わりなので。破れたらすぐに出て、対処しないといけないんですけど、すぐに出られるほどの人材がおらず、とりあえず抑えなきゃいけない。そういうのはよくあります。
こういう言い方は悪いんですけど、しんどい時こそ人間の本性が出てしまい、(患者さんのなかには)辛く当たる方はたくさんおられますね。私たちにきつくあたる方が。
普段から、コロナになる前からそういう方はもちろんたくさんおられましたし、私どもはそういうのに慣れてはいるんですけど。でもやっぱり、自分が今イレギュラーなところで働いているストレスと、なんとか助けてあげたい、なんとかよくなってほしいと思いながらも、あまり治療法が確立されていないので、私たちも手探りの状況でやっている中で、こう辛く当たられると……ちょっと人間の気持ちが出てしまったりすることはあります。
矢野監督を認めざるをえない
——こういうお話を聞くと今年の阪神強くて良かったなって思いました。
いや本当にそうですよ。観に行きたくて仕方がないんですよ(笑)。もうどうしたってね。
去年はだから辛かったですよね。そんなに忙しくもなかったときなのでまだよかったんですけど、能見さんのことや福留のことがあり、「ちょっと、しっかりしてよ」って思ってました。「もうこれ以上ストレス増やさんといてよ」みたいな(笑)。今は強すぎて逆にそっちのストレスがない……。でも観に行きたい。っていう、そこですよね。
——どうしたんだっていうくらい違うチームになりましたよね。
本当に打てますよね、今年は。ずっと中継ぎ陣はよかったですが、打線が凡打ばかりで。守備も悪くて。どうしようもなかったんですけど……(笑)。
——去年の前半とか、エラー見るたびに「これ金もらってやるプレーちゃうやろ!」みたいな、思わず言ってしまってました(笑)。
本当そうですよ。「金払っとんねん!」みたいな(笑)。
——これを見越してたんだとしたら、矢野さんは素晴らしいなって思ってるんですけどね。
そうですね~。それこそ鳥谷、福留、能見の件に関しては私はまだちょっと許してないところもあったんですけど(笑)。ただもう認めざるを得ないですよね。今の戦績は、私は経験したことがないので、もう認めざるを得ない。矢野監督をね。
——層が厚い。
そうですね。本当に。大山が抜けた時、どうしよう? と思ったのに、もう、サトテルですよ。サトテルってなんやねんみたいな感じだったのに(笑)。
甲子園に行くときはお腹をペコペコにして
——強いということ以外に、今年のタイガースの楽しみって何かありますか?
毎年のことなんですけど、なんせ甲子園は食べ物が美味しいので。
——ほう! そうですか。
食べ物がめちゃくちゃ美味しいんですよ。ここ3~4年くらいの甲子園のフードの充実。もちろん甲子園焼きそばとか、甲子園カレーとかもありますけど、選手とのコラボとか、期間限定のフードとか、いろんな種類のご飯が楽しめるんですね。おつまみもとても多いですし。私が通い始めた時と比べたら全然違います。だから飲みに行く感覚でもいける。居酒屋感覚で。
——仕事終わりの一杯みたいな感じ……。
そうですそうです! お腹も膨れるし、おつまみでお酒も飲めるし。お酒もいろんな種類があって。チューハイやハイボールなんかも本格的になってますし。お寿司も握ってますからね。
——へぇ~。
変な話、負けてても楽しめる。もちろん勝ってるのが一番いいんですけど。甲子園に行くときは、お腹は確実にペコペコにしといてくださいね(笑)。
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