6月28日午後、千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人がはねられた。2人が死亡し、1人が意識不明の重体、2人が重傷。過失運転傷害の疑いで逮捕されたのはトラック運転手・梅澤洋容疑者(60)。梅澤容疑者からは基準値を超えるアルコールが検出されたという。
くしくも1週間前の21日には、東京・池袋の暴走事故の裁判で、遺族の松永拓也さん(34)が初めて被告人への直接質問を行ったことが大きく報じられたばかりだ。「今も無罪を主張しますか」と問われ、“暴走事故”を起こした旧通産省幹部の飯塚幸三被告(90)はこう答えた。
「心苦しいと思っておりますが、私の記憶では(ブレーキとアクセルの)踏み間違いはしておらず、過失はないものと思っております」
愛する家族を奪われただけでなく、事故を起こした被告の無罪主張を聞かされる遺族の心痛は察するに余り有る。
平和な日常を突然奪う“暴走事故”は、なぜ繰り返されるのか。近年、「文春オンライン」特集班が“暴走事故”について報じた複数の記事を再公開する。(初出2021年4月1日、肩書き、年齢等は当時のまま)。
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「1人の命が失われる重大な事故を起こしたと聞いて、本当に驚きました。短い間ですが真理紗と結婚までして一緒に生活した人間として、彼女と薬物の関係は思い当たるフシがありすぎます。それに、引き起こした結果に対して5年という刑期はあまりにも軽すぎる。このような悲劇を二度と起こさないためにも、本人の更生のためにも、私が知っていることはすべて話したいと思います」
こう話すのは、自動車運転処罰法違反、覚醒剤取締法違反などの罪に問われ、3月15日に、東京地裁から懲役5年の判決を言い渡された中川真理紗被告(32)の元夫であるAさんだ。
中川は、昨年5月20日に東京都大田区で警察の職務質問を振り切って車を発進させ、時速121キロメートルで道路脇に突っ込み、歩道にいた高橋悠さん(当時34)をはねて死亡させた。近くのマンションに逃げ込んだところを逮捕され、その後の尿検査で覚醒剤が検出された。
親への報告もなく結婚
Aさんと中川被告が出会うきっかけは、「mixi」だった。2009年末に知り合ってすぐに意気投合し交際に発展、半年もたたない2010年2月1日には入籍している。
「当時、私は『mixi』の日記に自作の詩を公開していたんですが、それに真理紗がメッセージを送ってきたんです。当時の真理紗は明治大学の大学生でした。容姿に一目惚れしたということもありましたが、彼女の頭がキレるところや文才にも惹かれました。正式に告白した記憶はないのですがすぐに交際を始めて、何回めかの食事で勢いでプロポーズをしたらまさかのオッケー。2人で盛り上がって婚姻届を出して、相手の親御さんへの報告は事後報告でした。真理紗の家はお父さんが早くに亡くなっていて母子家庭。挨拶に行った時は『勝手にしなさい』と投げやりな反応で、あまり親子関係がよくはないのかなと思いました。それでも真理紗の実家から近い川崎でアパートを借りて一緒に暮らすようになりました」
Aさんと結婚したのは、中川被告が後に悲惨な事故を起こすことになる自動車の免許を取った直後のことだった。