6月28日午後、千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人がはねられた。2人が死亡し、1人が意識不明の重体、2人が重傷。過失運転傷害の疑いで逮捕されたのはトラック運転手・梅澤洋容疑者(60)。梅澤容疑者からは基準値を超えるアルコールが検出されたという。

 くしくも1週間前の21日には、東京・池袋の暴走事故の裁判で、遺族の松永拓也さん(34)が初めて被告人への直接質問を行ったことが大きく報じられたばかりだ。「今も無罪を主張しますか」と問われ、“暴走事故”を起こした旧通産省幹部の飯塚幸三被告(90)はこう答えた。

「心苦しいと思っておりますが、私の記憶では(ブレーキとアクセルの)踏み間違いはしておらず、過失はないものと思っております」

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 愛する家族を奪われただけでなく、事故を起こした被告の無罪主張を聞かされる遺族の心痛は察するに余り有る。

 平和な日常を突然奪う“暴走事故”は、なぜ繰り返されるのか。近年、「文春オンライン」特集班が“暴走事故”について報じた複数の記事を再公開する。(初出2021年1月14日、肩書き、年齢等は当時のまま)。

新年を迎えて間もない1月4日午後7時頃、いたましい事故は起きた。

 場所は東京・渋谷区の笹塚駅近く。1人の女性を乗せて甲州街道を走っていたタクシーが、横断歩道を渡っていた歩行者らを次々にはね飛ばした。事故を起こしたタクシーは被害者の1人をボンネットに乗せたままおよそ200メートル走り続け、はねられた49歳の女性が死亡。9歳の小学生男児を含む5人が重軽傷を負う大惨劇となった。

事故を起こしたタクシーを調べる警察官 ©️時事通信社

意識が朦朧として蛇行や加減速

 タクシーのフロントガラスは大きくひび割れ、ボンネットも衝撃で大破。事故現場となった横断歩道には、歩行者のものとみられる脱げた靴や血痕などが残されていた。ハンドルを握っていたのは都内在住の73歳男性で、タクシードライバー歴30年を超えるベテラン運転手だった。

「警察がタクシー会社から押収したドライブレコーダーには、事故の数分前から運転手の男性の意識が朦朧としている様子が映っていて、蛇行や加減速を繰り返していた。運転手は身体を揺らしたり前にうつむくような状態で、乗客の女性が声を掛けても返事がなかった。運転手は事故直後に車外で嘔吐していて、警察では運転中にくも膜下出血を起こしていた疑いがあるとみている」(捜査関係者)

笹塚近辺の道路は緊張に包まれた ©️時事通信社

会社にクレーム殺到、仕事が怖くなる人も 

 乗客の命を預かる運転のプロが引き起こした今回の事故。同じタクシー会社に勤務する同僚が、事故前の当日の様子について語る。

「事故を起こした日の朝礼では、特に目立つところはありませんでした。小さなタクシー会社で、ドライバーの3分の1は70歳を超えている。運転手には年2回の健康診断が義務づけられていて、体調に問題があればもちろん仕事はできない。なので、突然の事態だったのだと思う。年も年なので最近は週2~3回の勤務だったが、コロナの影響でお客さんが減り、全体的に売り上げは落ちていた。事故の後から会社にはクレームが殺到していて、多くのドライバーがハンドルを握るのが怖くなり、辞めることを考えている人もいます」

 事故を起こした運転手は、「自宅のローン返済に追われていた」という。