ババ子さんが「ひげガール」に入店した理由は…
愛知県出身のババ子さんは2003年、54歳の時に「ひげガール」に入店した。実は記者はこれまで何度もババ子さんと酒席を共にしたことがある。ババ子さんは少し顔を赤らめ、よくこんな身の上話をしてくれたものだ。
「裕福な家だったんだけどとても厳しくてね。ここに来る前はずっとサラリーマンをやってたの。1級建築士の資格もとって、世間体もあったからお見合いして30代で結婚。中学生の子どももいる。でも、自分の生き方を偽るのが嫌で、家族と別れて店にはいることにしました」
格安のタバコ「エコー」や「わかば」を吸いながら、ぽつりぽつりと生い立ちを語ってくれた。米山ババ子という名前の由来は、舞踏家の「ヨネヤマママコ」から拝借したという。
接客中には、会話の途中でワザと入歯を外し、笑いを誘うこともあった。だが、数十分もすると会話を詰まらせてしまう。高齢のせいか接客中に寝てしまうこともあり、店長や年下の“先輩オカマ”に怒られることも多々あった。
店がババ子さんにとっての“一番の居場所”だった
「サラリーマン時代にも隠れて女装はしていたけど、プロの接客は難しい。お酒も実は得意じゃなくて医者にも止められている。でも、カルアミルクは飲んじゃう。昔からご飯に砂糖かけるくらい甘いものが好きだから…」(ババ子さん)
糖尿病を患い、足を引きずる程悪化した。脳卒中も起こし、これまで入退院を繰り返してきたが、現場にこだわり店に出続けていた。店はババ子さんにとって一番の“居場所”だった。前出の同僚キャストが続ける。
「彼氏がいたこともあったみたいだけど、長くは続かず、1人で歌舞伎町のワンルームマンションに住んでいた。好きなタイプは高橋英樹、趣味は折り紙とクロスワードパズル。キティちゃんが大好きで新作がでると必ず買っていた。一度部屋に行ったけど万年床で、布団のまわりに100体以上のキティちゃんがいた」