試合が終わってもその場を動けなかった山﨑投手
佐藤 昨シーズンは久しぶりに絶対に勝ってほしいという気持で切実に応援しました。もちろんいつもそうじゃないといけないんですけど(笑)。CSファイナルの4戦目は、結局、7対8で敗けましたけど、ギリギリまで相手を追い詰めて、最後まで選手もファンも誰一人諦めてない感じがすごかったです。クローザーの山﨑康晃投手が8回に登板して0点で抑え、9回に追いついたら、もう一回投げる準備をしていました。終わった時に全然ベンチに帰らないで、動けない、信じられないというように立ち尽くしていたのが印象的でした。
三浦 悔しいですよ。でも、僕は目の前で何度か相手が日本一になったのを見たことがありますけど、それを目に焼き付けておけば、それが次に頑張るエネルギーになる。今度こそ自分たちが胴上げをするんだ、ってね。
佐藤 やっぱり三浦さんの引退試合からの流れがあったんじゃないかと思います。チームもファンも一丸になって諦めずに戦う感じが、ドームでもマツダでもずっとありました。これが次のシーズンにつながってくれたらいいですね。
三浦 そうですね。いいチームになってきて、僕の唯一の心残りは、このメンバーと一緒に優勝したかったということ。優勝がすごくいいものだというのは、常々話しているんですけど、実際、味わわないと分からない。でも、近い将来、やってくれると思います。
*「“ハマの番長”から後輩投手たちへ――三浦大輔×佐藤多佳子 横浜DeNA球愛対談 後編」へ続く
三浦大輔(みうらだいすけ) 1973年奈良県生まれ。92年高田商業からドラフト6位で横浜大洋ホエールズに入団。172勝を挙げ2016年引退。現在は解説者。
佐藤多佳子(さとうたかこ) 東京生まれ。1998年「サマータイム」でデビュー。『一瞬の風になれ』で本屋大賞と吉川英治文学新人賞。ノンフィクションに『夏から夏へ』。今年5月、『明るい夜に出かけて』で山本周五郎賞を受賞。