2021年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。事件部門の第5位は、こちら!(初公開日 2021年11月1日)。
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人けも無く、街灯もない。兵庫県加西市の山中、林の奥の荒れきった休耕田に、そこだけ草が生えていない一画があった。明らかに最近、人の手で掘り返されている。
「ここやないですか」
10月26日昼、その場所に気付いた兵庫県警の捜査員が土を払う。出てきたのは、女性の遺体だった。地元記者が言う。
「遺体はその数日前から行方が分からなくなっていた34歳の梅本依里さん。遺体が見つかった場所から12キロほど離れた隣の姫路市に住む無職の女性でした。家族は無事を願っていたと思いますが、殺されて、埋められていたという最悪の結末です。遺体が見つかる2日前の24日夜には、知人の男が監禁容疑で逮捕されていましたが、この男が梅本さんを殺したとみられます」
「知り合いの男の人と会ってくる」と自宅を出たが……
「知り合いの男の人と会ってくる」
梅本さんが、母親にそう言って姫路市の住宅街にある自宅を出たのは23日午後2時頃だった。だが、夜になっても梅本さんは帰宅しなかった。外出後、しばらくあったLINEの「既読」もつかなくなっていた。電話もつながらない。不安を募らせた母親は、日付が変わった翌24日の明け方、近所の交番に「娘と連絡が取れない」と届け出た。
事件の可能性を感じた兵庫県警が捜査を始めると、梅本さんが「会いに行く」と言った知人の男の身元はすぐに浮上した。同じ姫路市のマンションに住む会社員、関口羊佑(35)。過去にも何度か会っている相手であることもわかった。この日、梅本さんは自宅を出た10分後には、すぐ近くのスーパー駐車場で迎えに来た関口と合流し、その車に乗り込んでいたという。