先日、コメダ珈琲でアイスコーヒーを飲んでいたら隣の席のおばあちゃんたちの会話が聞こえてきた。

「この前“うなぎ”買ってきて家で焼いて食べたらすごい美味しいうなぎだったのよー」

 うなぎってなかなか家に買って帰って食べないよな……と思いながら、ふと思い出したのが秋山翔吾のことだった。ご存じのように今、パドレス傘下の3A、エルパソ・チワワズでメジャーリーグ昇格を目指している。

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 アキは最近、調子いいのかなぁ? そんなことを思い、ヤフーニュースで「秋山翔吾」を検索した。

 2019年のオフ、アキはメジャーリーグに挑戦することを決めた。そのときから、僕はアキなら絶対にアメリカでも通用すると思い、ワクワクしていた。青木宣親のメジャーリーグ挑戦のときもそうだったけど、元チームメイトが更なる高みを目指して挑戦することは僕らにとっても嬉しいことであり、見ている側にも応援できる喜びがある。

 アキは少年時代にイチローに憧れ、青木宣親の影響もあってメジャーに挑戦。その先輩ふたりは日本を代表する安打製造機で、アメリカでも通用することを証明した。

 2015年に216安打で日本プロ野球シーズン最多安打を打ち、現記録保持者である秋山翔吾も同じタイプだ。

 バットをインサイドからコントロールしてコースに逆らわずに広角に打ちわける高い技術を持っている。メジャーのストライクゾーンや、向こうの投手がよく投げるような手元で小さく変化するツーシームやスプリット系の球種にはじめは手こずるかもしれないが、対応できる選手だと僕は思っている。もちろん、それは今も変わらない。

 しかし渡米以来、ケガや不運なこともあり、彼本来のプレーが思うようにできずに苦しんでいた。

 そして今季開幕前にレッズを自由契約となり、秋山翔吾のメジャー挑戦もここまでかと思われた。また日本にもどってきて、気持ちを新たに再スタートをきって活躍すればいいじゃないか! 誰もが帰国を決断するだろうと思っていただろう(それならライオンズに戻ってきてねと思っていた一人だ)。

パドレスとマイナー契約を結んだ秋山翔吾 ©時事通信社

とことん納得するまでやる男

 そんななかで日本時間5月8日、パドレスとマイナー契約が正式に決まったと報道された。

 くしくも母の日に、新天地から再びメジャーを目指して挑戦することが決まった。小学6年生から女手ひとつで育てた母・順子さんは、息子の決断をどう思ったのだろうか。

 日本の野球界には戻らず、アメリカのベースボールを選んだ。アキらしいなと思ったのと同時に、険しい道をあえて選んだアキは凄いなぁと感心した。

 日本で首位打者1回、最多安打4回と申し分ない実績を残している、ハイレベルの一流選手だ。日本球界にもどってプレーした方が生活的にも慣れているだろう。金銭的にも、マイナー契約よりいい条件をオファーする日本の球団はたくさんあったと思う。

 それでもアキは、その道を選ばなかった。アメリカでまだやり残していることがある。今、日本に帰ってきたら、後悔すると思ったのではないだろうか。

 アメリカは契約社会だ。メジャーリーグも同様で、契約が全ての世界と言っても大げさではない。好条件で契約した選手の方が、起用法などで圧倒的に有利であることは間違いない。

 そんななか、本当に少ない確率に全てを賭けて野球に取り組む秋山翔吾はかっこいい! 彼はやると決めたら、とことん納得するまでやるタイプだ。