去る4月29日、「秋山翔吾、日本球界復帰か」のニュースが流れた。

 メジャーリーグ移籍3年目。シンシナティ・レッズでの開幕ロースター入りを逃し、退団。FAとなり、去就が注目される中での一報に、ライオンズファンは心をざわつかせた。

「秋山が帰ってくるのでは」「帰ってくるならウチに…」

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 日本球界復帰となれば、古巣の西武はもちろん、ソフトバンクなど複数球団が獲得に乗り出すと見られていたこともあり、Twitterではしばらくの間「秋山翔吾」の名前がトレンド入りした。このニュースを発端として、ファンの間で一足先に秋山争奪戦が繰り広げられていたわけだ。

 ライオンズファンにとっては、過去に主力をFAで流出させ、メジャー帰りの選手も他球団に行くことばかり――ある種のトラウマのようなものが相まっての過熱だったのは言うまでもない。

 ライオンズ在籍時には最多安打4度、首位打者1度のタイトルを獲得。ベストナイン4度、ゴールデングラブ6度の受賞。NPB記録のシーズン216安打に、NPB歴代3位タイの31試合連続安打、パ・リーグ記録の739試合連続フルイニング出場。

 輝かしい実績は言うまでもないが、それ以上に、悩み、苦しみ、それでも「1番・センター」でチームを牽引し続けたあの姿を忘れたファンはいないだろう。あの姿がもう一度日本で見られるのか……と思った矢先の5月1日、サンディエゴ・パドレスとマイナー契約のニュースが入ってきた。

秋山翔吾

「1番・秋山」が戻ってきたら…

 レッズ退団後、シンシナティでトレーニングを続けていた秋山は、当初アメリカでのプレーを望みオファーを待った。しかし、「いつまで待ち続けるべきか。アメリカでの契約は厳しいんじゃないか。時が過ぎる中でそう思うこともあった」と言う。

 実際、秋山はアメリカ国内からのオファーのリミットを4月30日に定めていた。端からマイナー契約も辞さない考えで選んだFAだ。自らが線を引かねばと考えていたのだ。

 ところが、4月末に組まれていたレッズ対パドレスのカードが行われている間に事が動き、朗報が入る。パドレスが獲得に動き出したのだ。

 秋山は「いつ球団から連絡があり、動きがあってもいいように」とパドレス傘下の3Aエルパソ・チワワズが本拠地を置くテキサス州にすぐに移動し、オファーを待った。そして現地時間5月7日に正式決定、メディカルチェックを経て、9日(日本時間10日)、マイナー契約に至った。

 今後はエルパソでプレーを続け、メジャー昇格を目指すことになる。

 話は少し戻って、秋山の日本球界復帰がささやかれ出した頃。西武OBの松沼博久さんがTwitterでこうつぶやいた。

 秋山翔吾歓迎会しますか?

 

 西武復帰の確証があったわけではもちろんない。ただ、兄やんですらそうつぶやきたくなるほどに、ファンは秋山に「日本なら西武」を求めた。結局歓迎会は「延期」となったわけだが、兄やんの“ファン代表”のつぶやきは、大きな反響を呼んだ。

 秋山の移籍後、固定できない「1番打者」に再び秋山が入ったら……。4番の山川穂高が本来の姿を取り戻し、チーム防御率は11日現在2.40でリーグと2位と、ケガ人が出ていることを除けばチームは近年稀にみるほど整いつつある。そんな今だからこそ、秋山が加われば……と夢想せずにはいられなかったのだ。