Eテレの子ども番組『でこぼこポン!』に抜擢された鳥居みゆきは、周囲に「変わっている」と言われる幼少期を過ごしていたという。

 大人になり、そして芸人「鳥居みゆき」となり、鳥居の中で生まれた変化。世の中に順応するために「殺して」しまったかつての自分を今、生き直す。

「鳥居みゆき」というキャラクターは彼女に何を与え、何を奪っていったのか。 (全2回中の2回/1回目を読む)

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鳥居みゆきさん

◆ ◆ ◆

「間違い探し」で気づいた、大人と子どもの違い

――『でこぼこポン!』に出演することで、気づかされることはありますか? 

鳥居 この間、番組で間違い探しのコーナーがあって、間違いが15個あるんですよ。私はあの短い尺では15個も見つけられなかった。だけど「ああ、15個見つけられなかった」って思うのって、大人だけだったんですよ。 

――どういうことですか? 

鳥居 番組を見てる甥っ子は、1個見つけたら「やったー、見つけられた! イェーイ」って言ってるわけですよ。ああ、そこの違いってやっぱりあるんだと思って。 

「15個あるから15個全部見つけてね」なんて言われてないのに、勝手に大人の解釈で「見つけなきゃ」と焦り「この尺じゃ間に合わねえよ!」とムカついたり。 

――なるほど。 

鳥居 だからそれが子供の柔軟さであり、しがらみとかを一切持ってない子供の気持ちなんだと思って、私もちょっと改心しました。 

――子どもの物事の捉え方に学ぶこともあると。 

鳥居 大人になるにつれて、苦しくなっているところってありますよね。嘘つきまくってて。中島みゆきさんの『ルージュ』という歌、ご存知ですか。 

――わかります。 

鳥居 「つくり笑いがうまくなりました」じゃないけど、昔は全然笑ってなかったのに、今はだいぶ作り笑いや愛想笑いができるようになっちゃった。 

 子供の頃めちゃくちゃ好き嫌いがあったんですけど、大人になったら「この苦さがいいんだよ」と食べられるようになって、味覚が鋭くなったんだと思ってたんですね。 

 でもそれ、進化じゃなくて退化なんじゃないか。味覚が鋭くなったわけじゃなく、むしろ子どもの頃の味覚の鋭さがなくなったからこそ、これが食えるようになってんだ、と思い始めた。

 

――なるほど。 

鳥居 逆に鈍くなってるから、これも食える、あれも食えるになってる。 

 子どもの時は、ほんとに純粋で「嫌だ」という感覚が明白じゃないですか。大人になってそういう気持ちを忘れちゃってたなと思って。 

 それで最近は結構素直になってきて。殺しちゃった子どもの時の私、生きづらくてひたかくしにしてきた短い幼少期の素直な自分を、今生きてもらってる感じ。 

――生きるために「殺して」しまった子どもの時の自分を取り戻してる。 

鳥居 大人になって、なんとなくうまくいく術を身につけたので。うまくいく術を身につけた上での、子供の素直さだったらいいだろう、みたいな(笑)。だから今、子ども時代を生きてます。