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中村剛也と山川穂高の相違点

 山川と中村は体型も似ていて、2人ともホームランバッターという共通点を持つが、タイプは少し違う。

 中村は、打球が高く上がって滞空時間の長い、きれいな放物線を描くアーティストだ。

 一方、山川は弾丸ライナーでスタンドに突き刺さる、パワフルなホームランバッターだと感じる。

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 山川がプロ1年目、2軍の地方遠征に出かけた新幹線で隣の席になったことがある。そのときに、バッティングのことを色々聞いた。僕が思っている以上に緻密に考えていて、意外な印象を受けた。

「こういうピッチャーのときにはあの球に気をつけて手を出さないようにして、カウントを取りにきたあの球をあっちの方向に打つように少しステップをこういう感じにして、ボールに対してこういう角度でバットが入っていくようにイメージして打ってます」

 僕の印象とは違い、1年目だが相手を研究して、自分なりの準備をして打席に入っているんだと感心した。若いうちからこういう準備をして試合に入っていくことは、その後の活躍に大きく関係する。

 110kgの巨漢(※)からは想像できないが、特技はピアノで書道も得意だ(※球団発表では103kgだが、先日、本人がSNSで110kgと投稿)。パワフルなバッティングに目がいきがちだが、そんな繊細な部分も今の活躍につながっているのかもしれない。

 山川が若手だった頃、中村がケガで2軍調整していたときがあった。西武第二球場でのイースタンリーグに出場していた2人は、打席に立った姿がそっくりだった。

「あれ、また山川が打席にいると思ったら、あ! 違う。中村だ」と見間違えるほど、構えが似ていた。

 ベンチに座っているときの雰囲気もそっくりで、中村の後輩で山川の先輩だった選手(美沢将)は、攻守交代のときに間違えて中村の背中をポンとたたき、「さぁ、頑張って!」と声をかけて送りだそうとした。

 直後、それに気づいた美沢はごまかそうとしたが……。

中村「おい! 今、絶対に山川と間違えたろ!」
美沢「いいえ、あ! はい、すいません!」
ベンチ「(爆笑)」

 懐かしい思い出だ(笑)。

青木宣親も見込んだ才能

 山川のプロ1年目は、1軍では14試合に出場して2本塁打。2軍のイースタンリーグでは21本塁打を放ってホームラン王を獲得している。将来の4番候補として、周囲を期待させた。

 その年のオフシーズン、僕は山川を自主トレに誘った。以前から沖縄で自主トレに参加させてもらっていた、スワローズ時代の同級生でチームメイトだった青木宣親にその旨を伝えると快くOKをもらった。山川も故郷の沖縄に帰っているタイミングで、自主トレの場所は実家からすぐ近くだった。

 打者としてのタイプは違えど、当時メジャーリーガーだった青木と一緒に練習できるのはプロ1年目の山川にとって大きな刺激になったと思う。青木から打撃技術や、野球に取り組む姿勢などを伝授してもらっていた。

 青木も山川の才能に驚いていた。今はまだまだ荒削りだけど、ここまで強い打球が打てるバッターはなかなかいない、と。「1軍でもホームランバッターになれるよ!」と期待していた。

 その後、青木の言葉どおりに山川はホームランバッターとして球界を代表する選手になり、オールスターにも4度出場。みんなに親しまれるキャラクターとサービス精神で、ファンの方々をさまざまに楽しませている。

 今年の山川は、昨年と一昨年の悔しさを全てぶつけているかのような大活躍だ。打撃フォームを調整し、好不調の波を抑えて開幕から好調をキープ。チームも優勝を狙える位置につけている。

 僕のお店はオープンから2年目で、いつかベルーナドームで過去に在籍したライオンズとスワローズの日本シリーズを見てみたいと思ってきたが、現実味を帯びてきた。今シーズン、その願いが早くも叶うかもしれない! セの村上宗隆、パの山川穂高という、球界を代表するホームランバッターの対決も楽しみだ。

 ライオンズファンのみなさん。今シーズンは最後までライオンズの試合を応援できるように、選手とチームと一緒に戦い“暑い夏”を“熱い夏”にしましょう!

 そして最後の最後まで、みんなであのポーズができるように山川選手を応援しましょう。

 どすこ~い!!!

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