2022年、ライオンズの投手陣が素晴らしい。シーズン前半を終了し、防御率2.51は12球団トップ。こんな日が来ることを、数年前に予想できただろうか。

 もう一度言う。現在、ライオンズの防御率が12球団トップなのだ。

 近年ライオンズはとにかく打って勝ってきた。2018~21年の4シーズン、チーム防御率はリーグワースト。リーグ連覇を果たした2018、19年ですら4点台でワーストだった。点取り合戦上等とでも言うように、取られたら取り返すことで勝ってきたのだ。それが今シーズンは(未だ途中とは言え)2.51で12球団トップ、リリーフに限れば1.77とさらに良く、こちらは12球団唯一の1点台ときた。すごい数字だ。

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 ちなみに、比較の対象にはならないがMLBでもこんな防御率の良いチームはない。

 投手陣が苦しんだ期間は短くはなかったが、その間もただ打線に甘えていたわけではない。開幕前、多くの投手から「今年は投手の力で勝てるように」という言葉が聞かれたように、彼らは地道に牙を研いできた。この数年の取り組みが、今年になって実を結んだのだ。

 その投手陣を支え、導いてきたコーチ陣の存在が大きいのは言うまでもない。そこで今回は、豊田清1軍投手コーチの話を書きたい。

豊田コーチ(左)と平良海馬

ドラ1・隅田知一郎への激励

 豊田清コーチ。現役時代は西武、巨人、広島で19年間の長きに渡って活躍された。キャリアの初めは先発として、中盤からはリリーフとして働き、2002、03年には38セーブを挙げ、最優秀救援投手に輝いている。

 引退後は巨人で7シーズン、コーチをつとめた後、2019年は解説者としてグラウンドの外から野球を観て、2020年シーズンから西武の投手コーチをつとめられている。

 文化放送では、その豊田コーチをメインパーソナリティとする番組「豊田清 いつもメガネ曇ってます」を、交流戦ブレイクの期間に放送した。リスナーからの質問をきっかけに1時間、野球談議を繰り広げたわけだ。

 現役のコーチがシーズン中に番組のパーソナリティをつとめること自体が非常に珍しいのだが、その中で感じさせられたのは豊田コーチの選手への深い愛情だった。

 開幕2戦目に先発登板し初勝利を手にしたものの、その後勝ちが付かずに2軍行きとなっているドラフト1位ルーキー・隅田知一郎投手に関しては「しっかりとした知識を持った選手」と評価した上でこうエールを送った。

「開幕2戦目で起用していいピッチングをしてくれました。このプロの世界で1つ勝てる人は、2つ目も3つ目も勝てると思っているんです。ずっと勝てないのであればそれは勝てないかもしれないけれど、1試合目で勝てましたから、必ず次も勝てると信じて使ってきました。負けが先行しても弱気になってほしくないな、と。今年で終わりではなく、スタートしたばかりですから。これからです」

 また、こう奮起を促した。

「キャンプから、何もわからない世界で走り続けてきてくれた。今回2軍へ行くことになりましたが、そこで得るものはたくさんあるはず。1軍がよくて2軍がダメということではない。こんな練習があるんだ、こんなことがあるんだ……と一つずつ階段を上がって来てくれたらいい。この経験を経てもう一度『やってやろう』という気持ちになって這い上がってきたら、(佐藤隼輔投手とともに)もっと強い二人になると思います」

 真の投手王国を造り上げるために、隅田、佐藤両投手のこれからの活躍が必要不可欠なことは言うまでもない。プロに入り、新たな課題に直面もしているだろう。考え方を変えなければいけないこともあるだろうし、まだまだやるべきこともたくさんあるだろう。2軍で経験を積み、これから長く続くであろう野球人生の血肉としてほしい。