外国人選手とも日本語で対話
豊田コーチはこんなことも話していた。
「外国人選手にも、日本に来たら日本語で話してほしいなと思っていまして。彼らに対してもほぼ日本語で話します」
外国人選手が日本で活躍するコツは、日本に馴染むことだと言う。その時は大変でも、その選手が早く日本に、チームに馴染めるようにあえて日本語でコミュニケーションを取る。豊田コーチの親心だ。
「(今の選手は)僕の言うことを必死に聞いて、一生懸命答えてくれるんですよ。特にエンスは、日本語を覚えようという意欲があって、コミュニケーションを取ってくれる。ギャレットなんかも『どうしたら良くなるんだ』と訊いてきて、答えたことに納得しないことも時にあった。そういうことの繰り返しの中で信頼関係ができていくと思う。エンスもスミスもボーも、みんなコミュニケーションをとって上達しています」
選手それぞれの努力はもちろんながら、豊田コーチのこうした心配りがもたらす好影響は大きいだろう。
増田達至の登場曲を聴きながら……
そして、「ピンチでもマウンドに行かなくていい、放っておいてもいいと思えるのは?」の問いには「増田達至じゃないですかね!」と即答。
「クローザーに指名してますから。クローザーは信頼してもらってなんぼのポジション。信頼しています」と全幅の信頼を寄せた。
余談だが、番組中の選曲を豊田コーチにお願いしたところ、1曲はサンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」、もう1曲がベリーグッドマンの「ライオン」を挙げられた。「『ライオン』を聴くと身が引き締まる」そうだ。
ベルーナドームに鳴り響くこの曲を聴きながら、増田投手のルーティーンについて、どうマウンドに上がるのか、歩数はどのくらいか……と見つめている。そして、右手で帽子を取り、右手左手で汗をぬぐい……と、豊田コーチも現役時代のルーティーンをそっとやっているのだそうだ。戦う気持ちは常にマウンドの上の投手とともにある。
「今年からベンチコーチになって、息遣いが荒いのか……毎試合興奮しているんです」。だからメガネが曇るのだ。曇ったメガネは豊田コーチがともに戦っている証だ。
「投手陣が素晴らしい」と言っても「西口コーチ(現2軍監督)が先発投手陣には厳しく伝えていてくれた」と控え目に話し、「まだシーズンの途中」と気を緩めることはなかった。ただ「投手陣で勝てる試合を」との目標が達成された日は、その手応えをたしかに感じているだろう。
そんなことを思いながら、マウンドに向かう豊田コーチに目を向けると、なんとメガネは帽子の上に乗せられているではありませんか……。豊田さん、メガネ曇ってないじゃないですか!(笑)
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