2020年から世界的に広まった新型コロナウイルスの影響は、2年が過ぎた今も続いている。感染拡大を防ぐために家で過ごす時間が長くなり、外食や旅行の機会が減り、リモートワークやオンライン授業が増えるなど、コロナ前は当たり前だと思っていた行動様式は一変した。それにともない、私たちの消費行動も大きな影響を受けている。

2人に1人が消費行動に変化。キーワードは“換え活”

 長引くコロナ禍で、個人の消費やライフスタイルがどう変化しているかを調べた「消費・ライフスタイルに関する調査」(タイムカレントによるインターネット調査、全国の20~69歳の男女1,000人が対象)によると、「商品やサービスの選び方を変えたり、変えたいと思ったりしたか」という質問に対して、「あてはまる」と答えたのは52.1%で、2人に1人がこれまでの消費行動を変える意向を示した。その理由で最も多かったのは、「ライフスタイルに適したものを考えるようになって」(34.4%)だった。

 また、「これからの商品やサービスの選び方の変化で共感できるもの」という質問に対しては、「コストも気にしつつ、自分の好み、価値観にあった選び方が強まっていく」(39.7%)がトップになった。これらの調査結果を踏まえ、経営コンサルタントの坂口孝則さんは、「商品選択によって自分も社会もより良くしていく時代。自律的な選択によって商品を選ぶ。まさに現在は“換え活”が必要な時代です」とコメントしている。

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 坂口さんの言う“換え活”はまだ耳慣れない言葉だが、今後の消費行動のトレンドを示すキーワードだ。コロナの影響で行動様式が大きく変わり、さらには物価上昇や円安など、先行きが不透明な中、限られた収入や大切な時間をいかに活用し、充実した日々を過ごすかが問われているともいえる。ファイナンシャルプランナーの田中佑輝さんのもとにも、暮らしを見直したいという相談が増えているという。

「特にマンションから、広い戸建てに住み替えたいという相談がかなり増えました。リモートワークなどが増えて、家で過ごす時間が長くなったため、自分たちだけの空間を確保したいという気持ちが高まっているようです。飲み会などの交際費が大幅に減った分、家族のためにお金を使いたいという人も増えていますね。中でもキャンプは人気があります」

 田中さん自身も、飲み会などの付き合いが激減し、日々の業務や地方講演などもリモートで行うことが増えたため、自宅で過ごす時間が増えたそうだ。その分、ホームパーティーを楽しんだり、子どもとのコミュニケーションを深めたりすることができたという。仕事面でもリモートで出張などの移動が減り、仕事を効率的に進められるようになったと話す。

「節約しすぎ」は本末転倒

 広い家に住み替えたい、家族との時間や趣味を充実させたいと考えた時に、まず必要なのは家計の見直しだ。田中さんも相談者に生活費の把握から始めるようアドバイスしている。

「生活費をきちんと把握している人は少なくて、皆さんざっくりとしか捉えていません。まず何にどれだけ使っているかを洗い出して、今と同じように使い続けると結果的にどうなるかを確認します。もし、将来的な子どもの教育費や老後の資金が足りないと気づけたら、いくら必要なのかを算出し、そこから逆算して今の生活費を割り出し、それを基準にお金の使い方を考え直していきます」

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 この作業をすると、お金を使いすぎている人と、使わなさすぎている人が明確になるという。将来が不安だからといって、節約しすぎて今の暮らしが窮屈なものになるのは本末転倒だ。使いすぎの人もそうでない人も、適正な支出額を知り、使う必要のあるところには気持ちよくお金を使うことこそが大事だと話す。

「自分の価値観や優先順位を見直す良い機会になります。生活費の見直しで、いくらまで使って良いかがわかれば予算化しやすくなります。自分の優先順位が明確になれば、それに応じてお金の割り振りもできるようになる。私の会社では精密なライフプランを作成できる、家計と人生計画の支援アプリ『マネソル』を提供しているのですが、そのユーザーの声で多いのは『夫婦喧嘩が激減した』というものです。将来の目標や、自分たちの価値観が明確になれば、自ずとお金の使い方も見えてくるので、揉め事も減るんですね」

自家用車コストの賢い下げ方

 将来的な目標や、自分が何に重きを置くべきかという自分なりの価値観が見えたところで、現在の家計を具体的に見直していくことになる。この時に意識したいのは、無理は決してしないこと。今まで当たり前のように使ってきたサービスのクオリティダウンや、我慢による節約は長続きしないからだ。こんなときは、自分へのフィット感を優先し、質を下げずにコストだけを下げる“換え活”という考え方が鍵となる。

「携帯電話を大手キャリアから格安SIMに換えるのは、“換え活”例としてよく言われる方法ですが、それ以外で家計に大きな影響を与えるのはやはり住まいや車関連のものです」

 住まいについては、いまニーズが高まっている郊外の戸建てへの転居は大いにありだ。都心のマンションより利便性は下がるかもしれないが、広い空間を確保できるため、満足感は大きい。マンションに住み続けていると、管理費や修繕積立金などがかかり続けるため、長い目で見ると、戸建てを買う方がお得な場合もある。また、戸建てだと駐車場が確保できることが多いため、自家用車を持っている家庭は車の維持費を削減することもできる。

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「車検代や自動車税は避けようがありませんが、駐車場代はばかになりません。車関連では保険の見直しも必須。車を購入した時に入った保険のままという人は多いのですが、ネット系の保険で十分。補償内容はそのままに、保険料を引き下げることができます。自動車保険に限らないのですが、保険の見直しをする時に補償内容などがわからないからといって担当営業マンにお任せすると、補償金額が多すぎたり、不要な特約なども付帯してしまいがち。これを機会に、どういう補償が必要かを自分で考え、判断する力をつけましょう。担当者がいないと不安、という人もいますが、ネット系保険のコールセンターの方が、対応が早かったりしますから」

「ポイント」「クレカ」でコツコツ得する 

 家や車といった大きな見直しと対照的なのが、ポイントを効率よく貯める“ポイ活”だ。田中さんは、かつてはポイントを貯めない派だったが、最近は考えを改めてポイントを貯めるようになったという。

「買い物やサービス利用で貯めたポイントを投資に回す“ポイント投資”ができることに気づいたからです。さまざまな証券会社がポイント投資を行っているので、私もTポイントを貯めるようになりました。クレジットカードで貯めたポイントで投資ができたり、積立額に応じてポイントがもらえたりする、クレジットカードによるポイント投資も見逃せません」

 クレジットカードも、過去に契約してそのまま使っている人も少なくないが、メインカードを自分にとってお得なものに切り替えて、そこで集中してポイントを貯めるだけでも違ってくる。クレジットカードの“換え活”も有効な手段のひとつといえる。

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「あと、面倒くさいと敬遠されがちなふるさと納税も“換え活”に有効活用できます。以前より還元率は下がっていますが、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくて寄附金控除が受けられるワンストップ特例制度もありますし、地方のおいしい特産品を家族で味わうこともできる。うちでは私が家計の予算を見て上限額を決め、妻がその金額の範囲内で返礼品を選ぶ、というように役割分担をしています」

「食事」「メイク用品」も賢く換える

 そのふるさと納税だが、外食が減り、家で食べる機会が増えたこのコロナ禍を機に、遅まきながら始めた人も多いという。

「これまでは『せっかく届いても、外食の機会も多いし腐らせてしまうかも……』と敬遠していた生鮮食品のふるさと納税を頼んでみるようにしました。釧路から届くサーモンはスーパーのものとは別格の美味しさで大満足! ふるさと納税は年を追うごとに手続きも簡易化しているので、面倒そうという先入観のある人ほど始め時だと思います」(35歳男性・マスコミ)

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 家で過ごす時間が減ったからこそ、家での食事を充実させたいと思う人は確実に増えている。田中さんの顧客の中には、コロナで思いがけず時間ができた人が、市民農園を借りて野菜などを作り始めたケースもあるという。

「物価上昇により、今までと同じものを食べているだけでもコストが1~2割増しになってしまいます。食費をまかなえるほどではないと思いますが、自分で野菜や果物を育てて楽しむこと自体に価値を置く人は増えています」

 また、コロナで飲食店も店内で提供している料理のテイクアウトサービスを充実させているので、これをうまく活用する方法もある。

「外食の機会が減った分、焼鳥屋や居酒屋のテイクアウトを利用して家での晩酌をランクアップさせています。スーパーの総菜より値は張りますが、宅飲みの酒代は安く済みますし、ゆっくり海外ドラマなどを見ながら飲むビールは格別です」(35歳男性・マスコミ)

 女性の場合、美容関係の出費にも変化が起こっている。外出の頻度が減ったことで、ファンデーションや口紅などの化粧品にかけるお金が減っているという。マスクで顔が隠れることから、歯列矯正やプチ整形に挑戦する人も少なくない。

「メイクの機会が減った分、メイクアップ品よりも基礎化粧品にお金をかけることにしました。特に、マスクでは隠れない目元に高い美容液を奮発するようにしています」(34歳女性・専業主婦)

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生活に優先順位をつける「判断力」がキーに

 このように、工夫次第で生活レベルを落とさずにお得に日々の暮らしを充実させる方法はたくさんある。何かをやめたり、我慢したりするのは辛さが伴うが、時の流れとともに考え方や価値観は変わるもの。変化に合わせて商品やサービスを選ぶ“換え活”は、今の時代にぴったりではないだろうか。

 少し周囲を見渡しただけでも“換え活”できそうなカテゴリーは多く、どこから手をつけるべきか、どのように始めたらいいのか迷うこともあるだろう。そんな時、“換え活”の情報ポータルサイト「換え活スタイルラボ」が参考になるだろう。「こんなモノ・コトも換え活できるのか!」と思いがけない気づきも得られる場としても、活用できそうだ。TwitterInstagramでも最新情報を発信しているので、こまめにチェックしておこう。

「確かにコロナによる影響は大きいものですが、それがきっかけで、『家の時間を充実させたい』『郊外の広い家で、車のある生活がしたい』『外食できなくても、美味しいものを食べたい』などと前向きな変化を望むようになるのはとても良いこと。誰でも何かしらの変化は不安になるものです。この不安を解消するには、自分で優先順位をつけて判断力を養い、上手に“換え活”も取り入れながら、今を大切にすることではないでしょうか」

 

提供:換え活推進委員会