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GPIFが不動産投資を行える「カラクリ」

 一見するとGPIFが不動産投資を行うのは不可能なように見えるが、実はカラクリがある。同改正では、運用体制の整備に伴って、オルタナティブ資産に対する投資をリスクリターン体制に応じて資産全体の5%まで認められるようになったのだ。オルタナティブ資産とは(1)インフラストラクチャ―、(2)プライベート・エクイティ(未上場株式など)、(3)不動産という定義になっている。簡単にいえば、これらの対象に上記の債券や株式という「カタチ」を通じてであれば投資が可能となったのだ。

 2017年12月19日GPIFは不動産投資の運用機関として三菱UFJ信託銀行を選定した。同行が組成する不動産投資ファンドを通じて国内不動産への投資を本格的に実行する体制が整ったことになる。156兆円の5%といったら7.8兆円。すべてが不動産投資に回るわけではないが、発足して16年になる国内REITマーケットの資産規模が約15兆円であるからそのインパクトは絶大である。

 国はすでにREITに対してもマーケットでは日銀を通じて一定額を買い支えているが、不動産マーケットに公的資金を注入することで不動産マーケットを支える構図が出来上がることとなる。であるならば、個人にとっても不動産は「安全な」投資資産ということになる。買いまくるGPIFやREITの後ろからついていけばよいからだ。不動産がよくわからない個人であっても国が支えてくれるマーケットなら安心、安全だ。

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働き方改革でセミプロの個人不動産投資家が台頭

 働き方改革でどうやら「副業」も幅広く認められる方向である。不動産投資は今やネットを利用すれば、個人でも多くの情報を居ながらにして得ることができる。2018年は残業がなくなった自由時間を利用して「小金」を不動産に振り向ける個人が急増し、「セミプロ」と呼ばれるような個人不動産投資家が台頭することだろう。

 いっぽうで法人でも個人でも良くも悪くも「格差」社会の到来と言われている。富める者はますます富み栄え、貧する者はどん底におちていく、そんな中でオフィスビルやマンションでは究極の「ブランド化」の時代を迎えるだろう。

 今後2020年までに都心部を中心に建設が予定されている多くのオフィスビルは都心5区に立地し、しかもワンフロアの面積が数百坪から1000坪を超える巨大航空母艦のような建物だ。当然賃料も高い。こうした物件は大手デベロッパーのような大企業でしか建設できないし、入居できるテナントは大企業オンリーとなる。都心居住が進む中、都心部のタワマンに住めるのはもちろん一定の高額所得層のみとなる。大企業も個人富裕層も無類の「ブランド好き」だ。ブランドビル、ブランドマンションが「とんでもない価格」で取引される年となってくることだろう。

インバウンドが3000万人の大台を超える

 インバウンドは2018年ついに3000万人の大台を超えるはずだ。人数ばかりが注目されるが、実は彼らが持つマネーは日本で猛威を振るっている。インバウンドマネーはすでに北海道のニセコや長野の軽井沢などでは、日本人には信じられないような価格で取引が行われ、外国人だけの独自の不動産マーケットを形成しつつある。インバウンドマネーは東京、大阪のマンションやアパート、そして地方都市へと拡散している。不動産屋は儲かって仕方がないのである。かつてパリに「爆買い」ツアーをする日本人をパリっ子たちはしかめ面で眺めたものだが、彼らの懐を潤すことになった。同じことが日本でも生じているのだ。2018年も不動産マーケットはインバウンドマネーの恩恵に大いにあずかることになるだろう。

ニセコや軽井沢で猛威を振るうインバウンドマネー ©iStock.com

 インバウンド対象ビジネスとしては2018年6月には住宅宿泊事業法が施行される。ようやくルール化される民泊はこれまでの違法民泊を駆逐する一方で、大量の新規供給を促すこととなる。空き家の活用、空室に悩むアパートオーナーにも民泊活用は朗報だ。民泊元年は民泊が新しい不動産ビジネスとして開花する年になるだろう。

 2018年日本の不動産は「まことに絶好調だ」と能天気に考えたくなるような材料で溢れている。「バブルはまだまだこれから」とニンマリ顔の不動産屋が「宴たけなわ」マーケットを闊歩するのが2018年なのである。

「後編 それは意外に早くやってくる……『宴の終わり』のシナリオ」に続く