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共犯関係の中の一部でありたい

 筒香が抱える「孤独」を考えたとき、私はとある人のインタビューを思い出していました。縁あって何度か取材させてもらっている、ももいろクローバーZのリーダー、百田夏菜子さん。普段は本当に明るくて、おちゃらけていて、メンバーを、スタッフを、そしてお客さんを全力で笑顔にしてくれる百田さんが、インタビュー中一度だけ「孤独」という言葉を口にしたことがありました。

 グループの中で初めて、朝ドラに出演し、東京と大阪、アイドルと女優を行ったり来たりしていた百田さんが、当時の状況を振り返ってぽつりと「孤独、ですね」と言いました。グループのために自ら厳しい環境に飛び込み、しかしそれは今までのアイドルとしての自分のパフォーマンスを忘れてしまうほどの激しい経験であり、葛藤だったと。筒香はキャプテン、そして百田さんはリーダー。常に自分とチームは重なり、責任とモチベーションは重なる。濁流のよう襲いかかってくるエゴ。その流れに飲み込まれないように、進んで孤独を引き受けているんだなと私は思いました。

「孤独ですよ」。その後に筒香はこんなことを話していました。「でも、人にどう思ってほしいとかではないんですよ、正直。じゃあこれが他の人に誰か出来るかと言ったら、経験できないことを僕はできているわけだから。それは本当にありがたいことです」。百田さんも笑顔で言っていました。「あの時の経験がいつか絶対宝物になると思う」。孤独だけど、孤立ではない。一人だけど、一人じゃない。無敵と思われている人が我々ファンに向けて「孤独の中にいる」と明かしてくれたのが、うれしかった。

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 正直筒香がそこにいてくれるだけで私は幸せなんです。世界中のかわいいを集めてもまだ足りないくらいかわいい筒香が、そこで笑っていてくれれば。だけど筒香がチームの勝ちを望み、優勝を求めるなら、そのために全ての孤独を引き受けるなら、何もできないけど、あなたの孤独を知っているひとりでありたい。もし声を出すことで力になるなら、死ぬほど声を出したいです。共犯関係の中の一部でありたいと私は願います。激動の2017年は終わりを告げ、未知なる2018年がやってくる。途方もなかった夢がリアルになるとき、筒香の孤独はキラキラと輝き出すのでしょう。まるで、灰の中のダイヤモンドのように。

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