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「良い練習ができていたので自信もあって、1区は自ら志願しました。ペースが遅かったら前に出ようと考えていて、ある意味プラン通り。誰もついてこなかったので、もう自分を信じて行きましたね」
沿道には、地元熊本から母親を始め恩師や友人が駆けつけていた。チームメイトからの声援にも励まされ、快調にトップを独走する。ついにレースは残り2キロ足らず。だが、足が限界に来ていた。
「六郷橋を下った辺りで足が攣りかけて、追い抜かれてからは記憶も曖昧です。後で映像を見返したら、めちゃくちゃ早く襷を取っているんです。もう早く終わってほしかったんでしょうね。地獄のラスト1キロでした(笑)」
「強豪校でなくても箱根で活躍できる」
集団の中で足をためて後半勝負の選択肢もあったが、1人で飛び出したことに悔いはない。
「欲を言えば区間賞を取りたかったですけど、無名の自分でもここまでできた。強豪校でなくても箱根で活躍できることが示せて、自分としては満足しています」
卒業後は一般企業に入社し、競技者としてはピリオドを打つ。多くの陸上少年に夢を与えた、まさに一世一代の大逃げだった。
撮影 杉山秀樹