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涌井秀章の残留がロッテの“最大の補強”になってはいけない

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/01/31
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「ポスト涌井宣言」を楽しみにしていたが……

 涌井が移籍するという「仮定」の世界で密かに楽しみにしていたのは「ポスト涌井宣言」だ。「涌井さんがやっていた開幕投手は今年から僕がやる」「涌井さんが投げていた150イニングは僕が投げる」「涌井さんが抜けても僕が二桁勝つ」そんな名乗りを心待ちにしていた。

 だがそういった声はあまり報道に上ってこなかった。「(開幕投手を)チャンスがあればやってみたい」と言ったコメントは出てきたのを見たが、そうじゃない。「もし仮に涌井さんが残留しても居場所がないぐらいにレベルアップしてやる」という気迫を見せてほしかった。ハッタリでもいいから「主役は俺だ」と言ってほしかった。これは特定の選手のことではない。先発する可能性がある選手全員にだ。

 2018年、もうすぐキャンプが始まる。監督が代わり競争は横一線になる。まずは残留を決めた涌井には感謝したい。またマリーンズのユニフォームを着ている姿を見られる。これほど嬉しいことはない。

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 昨年5勝に終わった分、倍返し、いや2015年のように15勝ぐらいしてほしいものだ。その場合3倍返しになるか。そして侍ジャパンに選出されて、オフの日米野球でメジャーリーグの連中相手に仕返ししてやってほしい。そんな筋書きがあってもいいじゃないか。そして常々口にしていた「ロッテで優勝したい」という夢を叶える原動力になってほしい。

 そして他の選手たちは「涌井越え」をしてほしい。確かに涌井はよく投げてくれたが2017年は5勝しかしていない。5勝ぐらい簡単に埋めてやる! ぐらいの意地をみたい。涌井という「兄貴」を弟分が越えられるか。キャンプでの成長を見たい。「涌井の残留が最大の補強」であってはいけない。「涌井の流出に備えてレベルアップした選手たちが最大の補強」であってほしい。

 最後に。涌井の夢は叶わなかった。私も涌井と同い年(偶然にも涌井の妻・押切もえと私の妻も同い年)なのだが、この歳になり、結婚をして子供もいるとなかなか自分の夢を自分の都合だけで追い求めることが難しくなってくる。それでも3ヶ月間、夢を追いかけた涌井をうらやましく思う。そして私も何かできることがあれば挑戦して見たいと思わせてくれた。野球のコラムを書きたい、という私の昔からの夢は叶った。次の夢はどうしようか。涌井の夢「マリーンズの優勝」が実現するまでに、私も何かを成し遂げたい。

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