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斎藤 私の本でも、バルセロナのミュニシパリズム(地域自治主義)を紹介しています。スペインでは消費問題相が脱成長を唱えています。より厳しい気候変動の時代を生きることになる若い世代がこの動きをとくに支持しています。そう考えると、10年か15年後には政治勢力図も変わるかも知れません。

 新しい経済の尺度も必要ですね。GDPだけではなく、環境への影響や人間の幸福度、社会の安全性などを測る尺度などです。たとえばGPI(世界平和度指数)を見ると、アメリカはナンバーワンではなく、ヨーロッパ諸国の方がランキングは高いのです。世界の見方を変える必要があります。

高齢権力者が支配する日本の停滞

ブレグマン 歴史を見ると、大胆な変革には時間がかかることが多いです。奴隷制度の廃止には2世紀以上かかりました。米国での女性解放運動も1世紀かかりました。

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 これは一般論なのですが、ほとんどの人は30歳を過ぎると変化を好まなくなる傾向があります。日本は高齢権力者が支配している社会なので、とくに停滞しています。

 けれども気候変動を回避するために残されている時間は短い。なので、つい悲観的になってしまいます。もしこのまま気温が2度、3度と上がったときに、科学者が示す未来予測は恐ろしいものです。多くの死者が出るかも知れませんし、エコシステムも壊されるでしょう。じつは私の住むオランダは、国土の一番低いところが海抜より7メートル低いんです。ですから地球温暖化への危機感も半端ではないのです。

斎藤 だからこそユートピア的な思想が必要ですね。戦争やパンデミックは、地球環境やわれわれの生活を悪化させてしまう。もし希望を捨てて受け身になれば、さらに悪いかたちの戦争、差別や暴力が生まれるのではないでしょうか。これらのバックラッシュに負けないように、民主主義を打ち立てないと。その意味で、今日ユートピア主義というのは現実主義なのです。

(ヨーロッパ文芸フェスティバル2022 オープニング対談にて収録)