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なまはげ館を支えるのは女性?

岡宗 もう感想のレベルが違うんですよ。男の人はまぁ、「面白かったです」くらいで終わりなんですけど。女の人は「あの話の“この世で一番美しい内臓”って表現がよかったです」とか、細かい繊細な感想を伝えてくれるんです。こういうことが文化を支えているんだなって。それで思い出したことがあるんですけど、何年か前に、テレビの仕事で秋田県の男鹿半島に行って「なまはげ館」っていうとこで撮影したんですよ。

博士 なまはげっていうだけでもう面白いもん(笑)。

岡宗 地元の方がなまはげのお面をかぶって、「悪い子はいねぇか」って再現するショータイムがあるんですよ。正直、「今、なまはげブームでもないし、こんなところ誰が来るのかな」と思ってたんです。そしたら観光バス2台で、女の子がグチャーっていっぱい来て、撮影ができなくなっちゃって(笑)。その女性陣に「そもそもなまはげに興味あるんですか?」って聞いたら、「興味ない」って言うんですよ。「知らなかった」と。だから女の人って、男鹿半島に来てきりたんぽを食べたあと「近くに『なまはげ館』あるから行かない?」「行く行くー」ってなってるんですよ。そんなん、男同士の旅行であります?

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©文藝春秋

博士 俺は血の中に「みうらじゅん」が入ってるから行くと思うけど(笑)。

岡宗 そういう特殊な方もいらっしゃいますけど、お金払ってなまはげ見ようって、男はあんまりならないと思うんですよ。そういう行動力のある女性が、本とか音楽とか映画とか、文化を支えてくれているんだなと。

博士 「なまはげ館」に女性が行くのは、そこにセックスアピールがあるからじゃない?

岡宗 えっ、なまはげにですか?

博士 あるよ。なまはげに巨根感はないの? 天狗と間違えてる?

岡宗 でもまぁ、なまはげも多少高圧的にきますしね。逃げ惑う対象ですからね。それはそうかもわからないです。

博士 なまはげは、鼻でかくなかったっけ?

©文藝春秋

岡宗 女性の読者といえば、『煩悩ウォーク』の原稿は、最初に僕の奥さんに読んでもらって、かなり直しているんです。この本は自分語りがベースなので放っておくと自慢話になったり、逆に自分を卑下することで身を守ろうとしてしまう。そういうバランスが、書いてるうちに自分ではわからなくなるんですよ。

博士 ああ、すごくわかります。

岡宗 本を書く時って、自意識との戦いなんですね。でも奥さんが「ここ、自慢話になってるよ」とか「ここ、卑下しすぎてて面白くない」とか指摘してくれて、そのバランスを全部調整してくれたので、そこは感謝してるんです。

博士 ボクのカミさんは本読みなんだけど、ボクの本のゲラを読んでくれる瞬間が人生で一番大好き。映画の『ガープの世界』でガープが書いた小説のゲラを彼女のヘレン(メアリー・ベス・ハート)が読むシーンを思い出すんです。

岡宗 あ、ふたりで惚気けたところで、そろそろ終電の時間ですね。じゃあとりあえず中締めということで。サイン会をしたあと、閉店の深夜2時までしゃべりますんで(笑)。

 

2018年1月31日 代官山 蔦屋書店
ヘアメイク 浦杉美芸広 (Miwako Urasugi)
ロゴデザイン サトウアサミ

煩悩ウォーク

岡宗 秀吾(著)

文藝春秋
2017年11月30日 発売

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藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて

水道橋博士(著)

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2017年11月30日 発売

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藝人春秋2 下 死ぬのは奴らだ

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