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水道橋博士×岡宗秀吾「男のロマンは女子にぜんぜんウケません」

『藝人春秋2』『煩悩ウォーク』同日発売記念MIDNIGHT TALKSHOW#2

開高健に似てる!

博士 岡宗くんは、“『藝人春秋2』という本の中に流れているものは開高健だ”っていうのを見破ってくれた人でもあるんですよね。あ、また開高「たけし」が韻を踏んでるけどね。

岡宗 いや今回、この代官山 蔦屋書店で僕とハカセが選書したコーナーを作っていただいてるんですけれども、僕は偶然、開高さんの『オーパ!』を選んでいて。僕もともと、顔面が開高健さんに似てるじゃないですか。

博士 似てますね。ほぼ同一人物です。

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開高健さん ©安藤幹久/文藝春秋
岡宗秀吾さん ©文藝春秋

岡宗  Google検索してみてください。僕ほんとに似てるんですよ。大阪弁の方ですし、『煩悩ウォーク』の中にスタイリストの山本康一郎さんの話が出てきますけど、この人は開高さんの最後のスタイリストをやっていらした方で。

博士 『藝人春秋2』の上巻の照英の章に『オーパ!』が何回も繰り返し出てくる箇所があるというのは、読めば誰でも気がつくんですよ。でも『藝人春秋2』は、開高健の本を読み返し、評伝を読み、それを踏まえて書いているというところまで見破った人は岡宗くんが初めてです。

岡宗 『藝人春秋2』は、下巻に行くにしたがって楽しい話からグーッと覚悟や思いを刻んでいくような文章になっていきますよね。下巻はもう、読み進めるのが大変で。

博士 一気に読めないと。『煩悩ウォーク』は一気に読めますよ(笑)。

岡宗 僕の本は3時間で読めます(笑)。書くのは8カ月かかったんですけど。

博士 岡宗くんが指摘してくれた『藝人春秋2』の開高健イズムだけど、その継承をしている人が実はもう1人いて、それはいとうせいこうさんなんです。せいこうさんは、『「国境なき医師団」を見に行く』(講談社)という本を出されていますけど、あれプライベートで行ってるんですよ。それで「これはどういう意味なんですか?」って聞いたら、「というかハカセ、これって開高健なんだよ、やりたいことは」って言われて。それから「作家っていうのは行動的に表に出なきゃいけない」と。せいこうさんも長く沈んでる時期があったから、その頃の反動として、開高健もそうであるように、海外まで出て行って行動して、自分の韻を踏んでいる。行動によって韻を踏むんです。俺とクロスしてるんです。だから『藝人春秋2』の奥付に、「SPECIAL THANKS いとうせいこう」と入れたんですよ。

岡宗 なるほどなぁ。せいこうさんも今、開高イズムを継承しているんですね。

「これじゃあ売れませんよ」と編集者に言われて

『煩悩ウォーク』(岡宗秀吾 著)
『煩悩ウォーク』(岡宗秀吾 著)

岡宗 僕、今回初めて本を書いて思ったんですけど、僕は今まで、男性向けに番組を作ってきたつもりなんですよ。『BAZOOKA!!! 』もそうでしたし、ゲスいことから、下ネタ、暴力、オカルト、格闘技、ナンセンス、エロ……を主戦場としてきたところがあって。それで「自分が作るものは男性に投げてるんだ」とずっと思ってきたんです。男が熱狂するものを作るのが男だと。それが正しいことだろうと、どこか思ってたわけです。それで『煩悩ウォーク』のカバーのデザインを自分でやらせてもらったんですが、文春の担当編集者と揉めまして。

博士 え、そうなの?

岡宗 最初はもっと男のロマンが前面に出たイラストだったんですよ。でもそれを担当の方が、「いや、これじゃあ売れませんよ」と。「今は、本を買うのは女性が多いんですから」って。いやいや待ってくれと。はなから僕は男に向けて作ってるんだと。女性向けにカバーをデザインするなんてナシだ……と、色々やりあったわけですよ。結局、最初の男っぽいデザインはやめて作り直したんですが、それで結果、女の人がたくさん手に取ってくれて、女の人のほうがちゃんと読んでくれるんだなっていう(笑)。

博士 カラテカの矢部くんが出した『大家さんと僕』(新潮社)は、素晴らしい本なんだけど、なぜ20万部を超えるベストセラーになったかというと、女性が買うから。でも矢部くんってセックスアピールはないじゃない?

岡宗 まぁそうですね。

博士 じゃあ読者は誰に対して心を揺らしているかというと、老婆の大家さんなんですよ。あの大家さんに女性が憧れて広がっているわけ。それはすごくよくわかった。俺なんかもう書いている世界観は完璧に梶原一騎じゃん。要は女性に届くことをまるでやってないんだよね。