水道橋博士とテレビディレクターの岡宗秀吾さん。芸人から霊能者まで、夜更けのトークイベントで繰り出される奇妙な話てんこもり対談の後編。

前編はこちら

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ECDさんの話がしたかった理由

『藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて』(水道橋博士 著)
『藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて』(水道橋博士 著)

博士 あ、俺、今日はECDさんの話がしたかったんだ。

岡宗 ラッパーの。先日、亡くなってしまいました……。

博士 プチ鹿島って知ってます? オフィス北野の後輩なんですけど。

岡宗 はい、もちろん。

博士 MXでやってる『バラいろダンディ』って番組があって、俺が金曜日、玉袋とライムスターの宇多丸さんが水曜日の担当なんですけど。それでこの前、プチ鹿島が初めて水曜日のゲストに出たんですよ。プチ鹿島がそこで、「僕、元々ラップやってました。実はECDさんが主催したラップコンテストで優勝してます」と言い出して。

岡宗 プチ鹿島さんが?

博士 そうなんです。「イエローモンキークルー」っていうグループでラップやってたと。それを聞いた宇多丸さんが、「知ってますよ」って言うんです。なぜならば、そのコンテストにエントリーして、ライムスターは落ちたから。

岡宗 じゃあ、プチ鹿島さんはライムスターを倒してるんですね。

博士 で、『バラいろダンディ』でプチ鹿島がその話をしてる時間に、ECDさんが亡くなられたという。

岡宗 はぁ……。

水道橋博士さん ©文藝春秋

博士 単なる偶然ですよ。単なる偶然だけど、これが俺の言ってる「星座」なんです。偶然並んでるにすぎない星だけど、星を結べば物語が夜空に浮かび上がるっていう概念、それが物語なんだと。でもこれを確かめる人がいないから、偶然が物語を結んでるということに誰も気づかない。「星座」っていうのは常に人間の暮らしの中にあって、その物語を求めてない人には全く見えない。でも求めてる人にだけ見えていく。

岡宗 そういうふしがありますよね。今日だって、奇しくも僕らがお世話になった川勝正幸さんの命日で、恵比寿で「集う会」があって。

博士 そうそうそうそう。

岡宗 今日ここでハカセと僕がこうやってお話させていただいてるのも、うーん……っていう思いがちょっとありますね。

博士 あと、今日は渋谷のクラブクアトロでミュージシャンの遠藤賢司さんの追悼ライブもあるんですよね(注・浅草キッドは遠藤賢司さんの「東京ワッショイ」を長年漫才の出囃子に使っている)。だから今日は渋谷で偶然3つのイベントが重なっているんですよ。惑星直列ですよ。

ハカセとたけしさんとの縁

博士 そうだ、俺が「これが一番“星座感”がある」と思ってる話をしてもいいですか。自分の伴侶とは赤い糸で結ばれてるという話。俺のカミさんは、面識がない頃から俺のブログの読者だったんです。で、俺以外の男性と結婚する予定があって、最後の家族旅行だってことで両親と金沢に行ったところ、タクシーの運転手さんが「お客さん、芸能人で誰が好きですか?」と聞いてきた。こういう会話ってよくあるじゃないですか。

岡宗 ありますね、タクシーの運転手さんと。

左:岡宗秀吾さん 右:水道橋博士さん ©文藝春秋

博士 それでカミさんが「知らないと思いますけど、浅草キッドの水道橋博士が好きなんです」って言ったんですね。まだ俺とは一面識もない頃ですよ。そしたらタクシーの運転手さんが、「水道橋博士は俺の弟子だよ!!」って、金沢訛りで話してきたの。そのタクシーの運転手さん、俺が30年前に修行した、浅草フランス座の岡山社長だったんです。

岡宗 へぇー。

博士 それで隣に座ってたカミさんのお父さんは、俺の名前を一度も聞いたことがなかったもんで、メモ帳に「水道橋博士」って書いたんですよ。そしたらその3年後に俺が、「お嬢さんを嫁にください」って言いにきた……って話。これすごくないですか。

岡宗 すごいですね。じゃあ奥様は途中で結婚相手を変えちゃったってことですね。

博士 まあそうですね。で、これは去年に発覚したことなんですけど、足立区在住のカミさんのおばあちゃんが、たけしさんのお母さん、北野さきさんとずっと仲良しで、昭和18年頃から北野家の2軒隣りに住んでいたってことがわかったんです。

岡宗 すごいっすね。

博士 もうびっくりしましたよ。それで去年の12月22日にうちの母親が死んで、その4日後に足立区のおばあちゃんも亡くなったんですよ。

岡宗 えーっ。

博士 そのお葬式で、確認できたの。完全に偶然だけど、神の手によって運命づけられているとしか思えないです。

岡宗 やっぱりハカセとたけしさんとの縁というのは、ちょっとレベルを……。

博士 超えてますよね。

岡宗 他人が見てもそう思いますから。