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 この制度が創設された背景が、国内で増え続ける所有者不明土地問題だ。所有者不明土地問題研究会の調査によれば、2016年において全国で所有者が不明である土地の面積は410万haに及び、これは九州本島の面積367.5万haを凌駕するものとなっている。さらに同研究会によれば、何の対策も講じないまま推移すると、2040年にはその面積は720万haまで拡大し、国土面積の2割、北海道本島の面積に匹敵する規模に膨れ上がるとのことだ。

 国はこれ以上所有者不明土地を増やすことは、防災や行政、財政でもよろしくないと考えている。そもそも国民の土地に対する利用ニーズが低下しているのに、相続で望まない土地などを抱え込み、その負担に苦しむ、管理をせずに放置する、相続にあたって登記もせずに野放しにするといった行為の積み重ねがこの問題を深刻にしている。

写真はイメージ ©iStock.com

 実際に法務省が2020年に行った調査では、土地所有世帯のうち、土地の国庫帰属を望む世帯が全体の20%に及ぶことが報告されている。

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 ではこの相続土地国庫帰属制度の概要をみてみよう。

タダでは引き取ってもらえない

 申請の対象となる不動産は「土地」だ。建物は含まれない。また申請者は、土地を相続または遺贈された人に限られる。共有の土地の場合は共有者全員で申請する必要がある。

 申請先は、法務局で、ここで要件審査が行われる。審査料は土地1筆当たり1万4000円だ。担当官が現場に実査などに出向くことが想定されている。審査で承認されれば、国で引き取ってくれるが、注意しなければならないのが、国はタダでは引き取ってはくれないということだ。

 タダで引き取ってくれるとなれば、土地を管理するのが面倒だとして管理コストを国に転嫁することが目的となり、国民の間にモラルハザードが蔓延することになるからだ。そこで、国は国庫に帰属する際には、審査手数料に加えて、土地管理費10年分に相当する負担金を事前に納付することを求めている。負担金は宅地、田畑は面積に関係なく一律20万円、森林は面積に応じて算出される。だが、宅地のうち都市計画法の市街化区域または用途地域が指定されている地域内の宅地は面積に応じて算出。田畑も宅地と同様に市街化区域または用途地域の指定のあるような都市型の農地、農用地区域内の土地などは面積に応じて負担金が算出される。都市圏の宅地や都市農地などは面積に応じての負担金が求められてしまうのだ。

 ちなみに法務省ホームページに掲載されている「自動計算シート」によれば、市街化区域内にある土地であれば、宅地は200㎡で793,000円、田畑1000㎡で1,128,000円になる。森林も意外と高く、20,000㎡で431,000円となる。