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相続してしまった「いらない土地」は国にプレゼントしよう

2023/04/18
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意外にハードルが高い「申請と審査」

 気になるのは要件審査でどういった土地であれば承認されるかだが、現在判明している限りでは、申請時の要件としては、

(1)建物が建っていないこと

(2)土地に担保権や使用収益権などが付されていないこと

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(3)他人の利用が予定されていないこと

(4)土壌汚染がないこと

(5)隣地との境界が確定していること

 などが想定されている。また審査にあたっては、

(1)勾配のある崖地

(2)土地の管理、処分に支障があるような工作物がある

(3)地中埋設物が存在する

(4)隣地所有者などとの間で裁判に発展するような深刻なトラブルがある

(5)土地の管理、処分に支障が出るような多額の管理費用、労力がかかる

 などの事象が認められる場合には、承認されないとのことだ。

©iStock.com

 また国庫に帰属できる相続財産は、この制度が開始される(23年4月27日)以前の土地でもよいとされている。これは、多くの人がかつて相続し、自分にとって価値がないと思われる土地を国に引き取ってもらうチャンスが到来したともいえよう。

 ただし、申請や審査にあたって要求されている条件は意外にハードルが高そうだ。田畑や森林、地方に残された先祖伝来の土地などは、権利関係が複雑で登記もされていない、境界が定まっていない、地役権や入会権といった権利が付帯する、など解決しなければならない問題が多数あるからだ。

 都市市街地であれば、こうした問題はあまりないかもしれないが、家の解体費用に加えて、土壌汚染や地中埋設物などの処理や撤去などに多額の費用が掛かる恐れもある。またそれらの費用を負担したうえで、さらに多額の負担金を支払わなければならないことを考えると、更地として売るほうがよい、ということにもなりそうだ。

 いっぽうで国は24年4月より、不動産相続時に、登記することを義務付けした。また従前に相続した不動産についても今後3年間での登記を義務付け、違反した場合には10万円の過料を科すことにしている。

 相続してしまった土地の扱いに一定の出口が用意された反面、出口要件を満たさない土地については、登記を義務付け、固定資産税を徴収し、登記しない者に対しては処罰する。最初に飴玉を見せて、後に鞭をふるうのがこれから2年の土地政策の基本方針だ。いらない負動産、早く処分しておいたほうがよさそうだ。

負動産地獄 その相続は重荷です (文春新書)

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牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

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