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カッターで手首を切った小6女子、クラスメイトに椅子を投げた小6男子…スクールカウンセラーが向き合う、子どもたちの“心の問題”

カッターで手首を切った小6女子、クラスメイトに椅子を投げた小6男子…スクールカウンセラーが向き合う、子どもたちの“心の問題”

『木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架』#1

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 スクールカウンセラー・五加木(うこぎ)純架は、1週間のうち木曜日だけ小学校にいる。彼女のもとにやってくる児童たちが抱える悩みは様々だ。中には、心の傷が暴力行為や自傷行為として表れてしまう児童もいる。五加木はその一人ひとりと対話を重ねていく。

 コミック『木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架』(秋田書店)は、そんなスクールカウンセラーの仕事を通して、子どもたちの「心の問題」との向き合い方を描いた作品である。

『木曜日のシェフレラ』より

「スクールカウンセラー」と聞いても、実際にどんな仕事をしているのかピンとくる人は少ないかもしれない。担当編集者の小林節子さんは「子どものSOSをつなぐプロ」だと語る。

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「五加木先生は、少年漫画のヒーローのように、かっこよく派手に問題を解決していくわけではありません。児童の心に寄り添い、話を聞く。そこで出たSOSを確実に次につないでいく……『木曜日のシェフレラ』は、そんな『子どものSOSを(先生や親などの他者に)つなぐプロ』のお話だと思います」(小林さん)

『木曜日のシェフレラ』より

 本書は漫画雑誌『Eleganceイブ』の連載を単行本にまとめたものであるが、連載当時から反響も大きかったという。

「『Eleganceイブ』は30~50代の読者の方が多いので『自分の子どもの時にもこんな先生がいてくれたら』など、親の立場からの感想をいただく事も多かったです。特に『自傷行為編』を公開した際、SNS上では、今まさに悩んでいる学生本人や、過去に悩んでいた方々からの共感の声を沢山いただきました。『こんな先生がいてほしかった』という声が一番多いです」(同前)

「自傷行為編」で描かれる小学6年生の石動瑠亜は、突然ピアスを開けて学校に来たことで、担任の先生やクラスメイトから問題児扱いされている。両親の不仲や母親の心ない言葉に追い詰められた瑠亜がついに手にしたのは、カッターナイフだった——。

『木曜日のシェフレラ』より

 そんな瑠亜も、五加木のところにやってくる。傷ついた瑠亜の心に五加木はどうやって向き合ったのか。

「瑠亜ちゃんが、自傷後に初めて自分の意見を父親に伝えたと五加木先生に報告したあと、先生が『すごいね、頑張って言えたんだね』と言うシーンが好きです。シンプルに褒めているだけなのですが、少女にとってその一言でどれほど気持ちが救われたのかが、画面から伝わってきて、初めて読んだ時は感動しました。少女の抱えている問題がすぐには解決するわけではないですが、今後の希望が感じられるシーンです」(同前)

 子どもたちの心と真っすぐに向き合う。簡単なようで、なかなかできないことを示して見せてくれる作品だ。

「心に悩みをもった子どもが、たった4文字『たすけて』と外にSOSを出す事が、どれほど難しいかを私たち大人が知るだけでも、状況は変わってくるのかなと思います。作中の『助けての灯をつなぐ』という言葉がとても印象的なのですが、悩みを持った子どもたちの周りに『この人には話をしてもいいんだ』と思える大人が増える事で、助けての灯がつながっていくといいなと思います」(同前)

カッターで手首を切った小6女子、クラスメイトに椅子を投げた小6男子…スクールカウンセラーが向き合う、子どもたちの“心の問題”

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