若者の「持ち家離れ」「車離れ」「高級ブランド離れ」……若者の消費行動が消極的になっていることを嘆く声は多いが、果たしてその原因はどこにあるのだろうか。

 欧米で生まれた「Z世代」という言葉が昨今日本でもよく使われるようになった。「Z世代」とは、1996年~2012年の間に生まれた若者を指す言葉で、年齢で言えば現在11歳~27歳の世代に当たる。

 ここでは、若者の消費文化を追ってきた廣瀬涼氏が、Z世代ならではの価値観や行動を深掘りして徹底解説した『あの新入社員はなぜ歓迎会に参加しないのか: Z世代を読み解く』より一部を抜粋して紹介。

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 好景気を体験しておらず、「良い会社に定年まで勤める」「結婚して子どもを持って持ち家に住む」というかつての幸せの形を求めない、求められない若者たちの消費行動の現状とは——。(全2回の2回目/前編を読む)

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消費したくても消費できない

 このような幸福感の変化は、消費に対する行動、価値観をも変化させている。筆者は次の3つの点に注目している。

©AFLO

(1)消費したくても、消費できない(お金に余裕がない)。

(2)必要でないものをわざわざ消費したくない。

(3)情報量の拡大で、消費したいものが増えている。

 順番にみていこう。

 まず、「(1)消費したくても、消費できない」という点である。

 投資信託協会の調査広報室レポートによると、金融資産、金融負債のうち、住宅・土地購入による負債を除いた額を純金融資産として比較すると、30歳未満については2019年には、1984年、2004年の両年より残高が減少しており、若者の資産状況の厳しさが読み取れる[図表6−2]。

 

 また、SMBCコンシューマーファイナンスが20~29歳の男女を対象に実施した「20代の金銭感覚についての意識調査2023」によると、20代が毎月自由に使えるお金は「1万円以下」が26.8%と最も多かった[ 図表6−3]。

 次いで「4万円超~5万円以下」が20.5%、「2万円超~3万円以下」が14.6 %、「1万円超~2万円以下」が13.8%で、平均は3万8628円だった。食料価格や住居費・光熱費などの生活固定費が上昇し、生活していくので精いっぱいのなかで、消費したくとも支出する余裕がないのは当然である。

 

安いモノに消費をして支出を抑えることが一般化

 同調査では現在の貯蓄金額も尋ねているが、「50万円以下」が44.7%と最多で、全く預貯金ができていない「0円」が17.5%いるのも注目される。