「なんで(生活は苦しいし、欲しいものも買えない状況で、勧めてくる上司の生活レベルも決して裕福にはみえず目標にできないのに、見栄を張って)欲しくもないモノを買わなくてはいけないんだ?」
昨今、若者の「持ち家離れ」「車離れ」「高級ブランド離れ」など、若者の消費に対する消極的な意識が“○○離れ”と揶揄されることがあるが、極論ではどれもタダでもらえてタダで維持できれば拒む人は少ないだろう。つまり若者は、そのような“モノ”や“消費行動”を拒んでいるのではなく、自分自身の生活や収入などを考慮したうえで「必要ない」「購入できない」と判断している(消費行動をとらない)のである。
お金に余裕がないから「画一化された幸福」に手が届かず、「酸っぱい葡萄」のように自己防衛としてそれが幸せと認めないという見方もできるかもしれない。あるいは、「画一化された幸福」に手が届かないから、違う形で幸せを見出していると捉えられるかもしれない。どちらにせよ、「その不必要な消費によって自分たちの生活が困窮するくらいなら消費しない」という価値観が生まれることは当然と思われる。
情報量の拡大で「消費したいもの」が増えている
最後に、「(3)情報量の拡大で、消費したいものが増えている」という点である。
SNSによる情報量の拡大は、欲しいと思うものが増えたということを意味する。今まで知らなかったものに興味を持ったり、潜在的な欲求を満たしてくれるものに遭遇したりする機会が増えているにもかかわらず、お金に余裕がないという状況がある。
アライドアーキテクツによる「SNSをきっかけとした購買行動や口コミ行動に関する調査」(2020年10月発表)によると、SNSを閲覧しているユーザー別に「SNSの情報をきっかけや参考に、初めて利用するECサイトで商品を購入したことがあるか」を尋ねたところ、インスタグラムが60.7%と最多で、続いてツイッターが55.2%、フェイスブックが54.4%と、いずれのSNSでも過半数が「購入経験がある」という。
また、「SNSの情報をきっかけや参考に、初めて利用するお店(小売店や飲食店)に実際に足を運んだことがあるか」についても、インスタグラム(50.5%)、ツイッター(46.0%)、フェイスブック(40.4%)のいずれも4割以上が「ある」と回答している。
他人のSNS投稿は、「疑似体験」としての機能を持っている。昨今は、誰もがユーチューバーのように動画を簡単に編集してSNSに投稿できるようになってきており、TikTokが台頭したことにより動画投稿の比重も大きくなっている。動画の情報量は、文字や写真より圧倒的に多い。