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戦前の新聞で、ネタを求めてナンパ待ちするモンスター企画“貞操のS・O・S”  新卒の1日目の女性記者が囮に…

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genre : ニュース, 昭和史, 社会

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そしていきなり着ていたインバネス(*11)で好子を包むと「ねえ、悪いこたァいわない。若いうちが花――面白いめに会ってお金がたまるってんだから、それで花が咲かなきゃ嘘ですよ」と甘言を尽くし、好子の着物の裾に手をやったのでいよいよか、と思った好子は「おもちゃにされて、そのあげく売り飛ばされて、そんな花の咲き方があるかッ! 馬鹿ッ!」と席を蹴って立ち上がった。

男は「この女、何もかも知ってやがらァ」と舌を巻いたのだった。

(*11)インパネス 着脱可能なケープがついた男性用の外套のこと。スコットランド北西部のインバネス地方に由来する。

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押し倒されそうになるも啖呵を切って抜け出す

最終回の舞台は神田神保町。通りすがりの学生がウインクをしたと思うとUターンをして尾けてきた。フルーツパーラーに誘われて映画の話をするうちに、寄宿舎の部屋に俳優のスチールがたくさんあるから見に来いと言う。

ついていくと金持ち学生らしく家具調度も高級なものばかり。大島の着物に着替えた学生、グレタ・ガルボやマレーネ・ディートリッヒの写真を見せていたうちは無事だったが、濃厚なラブシーンの写真を見せると急にキスを迫ってきた。逃げる好子を押し倒そうとしたそのとき、学生の友人が部屋をノック。

好子は渡りに船とドアを開け「あんまり女をアマクみるもんじゃあなくってよッ!」と啖呵(たんか)を切って抜け出した。

平山 亜佐子(ひらやま・あさこ)
文筆家、挿話収集家
兵庫県芦屋市出身。戦前文化、教科書に載らない女性の調査を得意とする。著者に『20世紀破天荒セレブ ありえないほど楽しい女の人生カタログ』(国書刊行会)、『明治大正昭和 不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』(河出書房新社、ちくま文庫)、『戦前尖端語辞典』(編著、左右社)、『問題の女 本荘幽蘭伝』(平凡社)、『明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記』(左右社)がある。
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